第92話「芝居と撮影とスケジュール」
[box03 title=”第92話「芝居と撮影とスケジュール」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
急にモニターから音声が流れた。
「このあと、オープニングの撮影を行います!」
とアナウンスが流れると、一息入れていた皆が、慌ただしくスタジオに向う。
僕もそれに続いた。
目の前には、部屋を半分にした大がかりなセットが組まれていた。
昔『8時だよ! 全員集合!』と言うお笑い番組があり、ザ・ドリフターズがコントをやる時に使われていたセットを思い出す。
部屋が丸見えになるように作られているのだ。
観客席の変わりにテレビカメラが4台置いてある。
部屋の中に入ると畳が敷かれ、奥には襖があり、中に入ると生活感が有った。
ただ上を見上げると、天井の変わりに無数の照明機材がぶら下がっている。
廊下も途中で切れていてその先には別のセットが組まれていた。
大きな広いスタジオ内にはセットが5~6個は組まれ、シーンナンバーごとに撮りわけていた。
その一角にある若葉寮の部屋のセットの前に続々と人が集まり始めている。
照明さんは忙しそうに明かりを調整し、スポットの照明の前にパラフィン紙のような半透明の薄い紙を洗濯バサミのような物を使ってとめていた。
4台のテレビカメラにはカメラマンがスタンバイをしつつ、そのケーブルを捌くアシスタントも慌ただしく動いている。
矢崎滋さんとイルカさんが入ってきた。
僕はそちらに向かい挨拶をした。
全員が揃うとディレクターがこのシーンの説明を始めた。
オープニングのタイトルバックに流れるワンシーンで、寮内の生活している様子を撮りたかったらしい。
ディレクターの言われた通りに動く。
それを4台のテレビカメラが撮影していく。
ロケの時と違い、4台のカメラがそれぞれ全員の動きや、バストアップの画像などを撮り分けている。
役者は芝居を続けていれば、いいので撮影時間はロケの時の半分ぐらいで進む。
今回は特に台本があるわけではないので、「雰囲気」を出せば良かった。
撮影はものの30分程度で無事に終わった。
翌日からは自動車教習所に通う日々が続いている。
外は春の訪れを告げる桜の花が咲き始めた。
自分が主役になる第4話の撮影までに、何としても免許証を取りたかった。
昼間は教習所に通い、夜は父親の車を借りて「仮免許練習中」のプレートをつけて練習をした。
1週間に何度かは赤坂のTBSテレビの制作部へ顔を出し台本を貰ったり、スケジュールの確認をした。
何かと忙しい日々を過ごしている。
撮影は第3話の収録が始また。
仕事に集中する為にも第4話の収録が始まる前に免許は取っておきたい。
スケジュールと睨めっこをしながら日程の調整をする。
マネージャーがいるわけでは無いので自分で上手く調整しないとやりたい事が出来ない。
空いている時間は全て教習所に通い予定通りに卒業する事が出来た。
後はいつ試験場へ行くかである。
そしていよいよ、第4話の台本を受け取りに行く日がやって来た。
TBSの制作部へ行き、真新しい黄緑色の台本を受け取った。
表紙には『オサラバ坂に陽が昇る』と印刷されていて、サブタイトルは「第4話・教護院送致」と書いてあった。
表紙をめくり中を見ると、それまで無かった出演者の欄に「朝倉洋次」と言う役名と僕の名前が印刷されていた。
役名と自分の名前が書かれているのを見て気持ちが高揚してくる。
スタッフとスケジュールの打ち合わせをする。
「4月15日からロケを始めて、天候の関係もあるから予備日を含めて20日までの5日間はロケ日です。」
僕は赤ペンで日程をメモする。
「その後はTBS内でのリハーサルが2日、緑山スタジオでの撮影が2日、全部で9日間で4話の撮影をします!」
と丁寧に説明をしてくれた。
僕は10日から14日の間に免許を取りに行く事にした。
これで受かれば撮影が始まる前に免許証を取れる。
そうすれば緑山スタジオまで車で通える。
ジャニーズジュニアの中ででは、唯一普通自動車免許証を持っている存在になれる。
そうすれば、それを武器に新しい映画やドラマの仕事が取れるかも知れない。
そんな事を考えていた。
「では失礼します!」
と制作部から出ようとした時だった。
「あっ、ちょっと待って!」
急にディレクターに呼び止められた。
「ちょっと、1時間くらい付き合ってもらえる?」
「はい」
返事をすると足早に後を追った。
足早に歩くディレクターの後について行った。
ついた先は昼下がりの誰もいないTBSの下にある公園にだった。
「悪いんだけど、ちょっとここからあそこまで歩いてみてくれる?」
と20メートルほど先を指さした。
「はい」
返事をしたものの、訳がわからないまま言われた通りに歩いた。
「はい! OK! じゃあ今度はこっちに戻ってきて!」
僕は返事をして指示通りに歩いた。
ディレクターの元に戻った。
「じゃあもう一度歩いて見て!」
僕は返事をして、ただ言われたまま同じように歩いた。
「何がしたいんだろう?」
そう思いながら3回往復した。
「うーん」
とディレクターは唸りながら僕を見ている。
「ちょっとダッシュしてみて! 行くよ、ヨーイはい!」
僕は思い切り走り出す。
「はい! 戻って来て!」
言われるままダッシュで戻る。
それを3回程繰り返し、4回目は声が聞こえなかったので振り返った。
ディレクターは僕を見たまま黙っているので歩いて戻った。
少し息を切らせて戻る。
「君は少し、格好つけようとする癖があるね」
「えっ?」
「歩く時の手の振り方や足の上げ方で癖が出るから注意した方がいいよ!」
「は、はい。」
「走って疲れた時に帰って来た時の歩き方が君らしい歩き方だと思うよ!」
図星だった。
「テレビってさぁ、芝居していても、してなくても、そのまま撮影した映像が流れちゃうから、気をつけないと役なのか素でいるのか解らなくなるからね!」
「そして見ている人は演技をしているのかいないのか解るからね!」
目から鱗である。
確かに最初は格好つけて歩いたかも知れない。
ディレクターは自分で実演してくれた。
「俺は役者さんじゃなから上手くは出来ないけれど、こうして体重を後ろに乗せて歩くと、ちょっと偉そうに見えないか?」
確かに偉そうに見える。
「これでポケットに手を突っ込んで、両足の爪先を外側にむけると」
不良やチンピラのような歩き方だと思った。
「今度は少し内股にして、猫背にすると!」
町中で見かける疲れたサラリーマンのような歩き方だった。
「君は変な癖は無いけど個性的でも無いから、ちょっとした事で意図している事とは違う意味にとられてしまうかも知れないから役作りをしっかり作って頑張って!」
と言われた。
改めて芝居の奥深さを感じた。
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