Johnny's

第12話「マッチと彼女とアルバイト」後編

たけJI

[box03 title=”第12話「マッチと彼女とアルバイト・後編」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]

髪型のせいか、買い物をしたお客さんに「マッチに似ているね! 」とよく言われた。

同じような髪型で同じような年頃なら、誰でも1度は言われた時代である。

真に受ける事はないが、悪い気はしなかった。

夏休みのアルバイトは快適に過ぎて行く。

仕事にも慣れて、瞬く間に時間が過ぎて行った。

お盆休みを過ぎた頃から、やけにこちらを見てはニコニコしている背が小さく、聖子ちゃんカットの、瞳の大きな女の子がいる事に気がついた。

目が合うと軽く会釈をして、ショッピングカートを片付けていた。

忙しくなると食品売り場のレジをしている、アルバイトの女子高生らしい。

赤いサンダルが印象的だった。

8月も終わろうとしていたある日の事である。

仕事を終えて、社員通用口を通りタイムカードを押して帰宅しようとした時だった。

その、赤いサンダルの彼女が立っていた。

「お疲れ様でした!」

と可愛い声で挨拶をしてきた。

「あっ、お疲れ様でした。」

不意をつかれて、一瞬声がうわずった。

「あのー、ちょっとお伺いしてもいいですか? 」

と少しモジモジしながら、けれども、はっきりした口調で話しかけてきた。

「はい、何ですか? 」

と答えた。

すると他の通行人の邪魔にならないように傍に寄ってきた。

近くに来ると頭一つ背が低い分上目遣いになる。

それがめちゃくちゃ可愛いくて、心臓がドキドキと高鳴った。

ふと人の気配に気付き、社員通用口のずっと先を見ると、4人の女の子がこちらの様子を伺っていた。

彼女の友達であろう。

その視線を追って彼女が後ろを振り返った。

「フワッ」といい匂いがした。

彼女は友達を追い払うような仕草をした。

それでも友達は頭を隠すだけでその場を離れない。

こちらを振り返り少し困ったような顔をした。

その表情に、ドキッとした。

「もう、同じ学校の悪友です。あのー、歳を聞いてもいいですか? 」

と、見つめながら聞いてきた。

「ええ、16歳です」

と答えた。

「えーっ、一緒ですねー! 」

と嬉しそうに微笑んだ。

「どうやって帰るんですか? 」

「大井町線で、二子玉川駅経由で梶ケ谷駅までだけど」

と答えた。

「同じ方向なので一緒に帰りませんか? 」

と聞いてきた。

勿論断る理由は無かった。

素足に赤いサンダルがとても彼女に似合っている。

僕の心臓はバクバクと高鳴っていた。

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