第38話「唯一の理解者それは・・・」
[box03 title=”第38話「唯一の理解者それは・・・」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
ドラマのラストシーンの撮影が終わった。
「これよりエンディングの撮影に入ります!」
とスタジオの中にモニター室からの声が流れた。
すると物凄い勢いで大道具さんがセットの解体を始めた。
バキバキバキッ!と、べニアで作られていたセットの一部を剥がす。
同時に、照明スタッフが慌ただしく照明を外していき、薄暗くなっていく。
それまであったセットは一瞬にして解体され、次々と運び出されいつの間にか何もない空間が出来上がった。
「それではジャニーズジュニアの皆さんお待たせしました! スタンバイお願いします!」
とモニター室から声がかかり、その何もない空間に散らばった。
少年隊の「ニッキ」「ヒガシ」「かっちゃん」の3人も衣装を着替えてスタンバイをする。
正面には大きなテレビカメラが4台配置してある。
「それではカメリハ始めます!」
と言うモニター室の声の後、「10秒前、9,8、7、6、」とカウントダウンが終わると共に音楽が鳴りカメラリハーサルが始まった。
少年隊の3人が歌い出すと僕達ジャニーズジュニアが踊り始める。
僕は間違えないようにカウントを数えて踊りながら、口を横に開いてジャニーズスマイルで笑うように心がけながら激しい振り付けを踊り終えポーズを決めた。
すると松本伊代ちゃん、柏原よしえちゃんの二人がTシャツ姿で入ってきて少年隊とやりとりをする。
その間に僕らジャニーズジュニアはカメラのフレームから外れると言う段取りだった。
「はい!オッケーです!」
と声がかかりカメリハは問題なく終わった。
「それでは問題がなければこのまま本番にいきます!」
アシスタントディレクターの方が踊る空間を点検し、照明のスタッフがライトの微調整をしている。
何も問題は無い様だ。
緊張感がみなぎり、静まり返ったスタジオ内に声が響いた。
「それでは本番行きます! 15秒前・・・・10秒前・・・5秒前、4、3、」
とカウントダウンをし『ウィ・ガット・ザ・ビート』のイントロが流れる。
スタジオ内の照明が色とりどりに少年隊を照らす。
僕は頭の中ではカウントを数えていた。
そして、タイミングを合わせていっせいにジャニーズジュニアが少年隊の後ろになだれ込んだ。
踊り出す。
他のジュニアとの位置関係を確認しながら、キレよく大きく笑顔で踊った。
音楽に合わせて、手を動かす。
手をより大きく、遠くへ伸ばす。
間違えることなく、笑顔で踊ることができた。
撮影は一回で終了した。
「はい! オッケーです! お疲れ様でした!」の掛け声が心地良かった。
数週間後、自宅のテレビの前に居座り番組が始まるのを待っていた。
番組を、父親、母親、祖母、姉、そして僕の5人の家族で見る。
25分間のドラマが終了し、最後のエンディングが始まった。
少年隊の後ろにジャニーズジュニアがなだれ込む。
画面の右側、4人目が僕だ。
しかし僅かに顔が写っている程度で、スローモーションで再生して「これが僕!」と説明しなければ解らない程しか映っていなかった。
わずか2分程度でエンディングの曲は終わった。
「何だ! これしか写ってないのか?」
と親父に言われた。
「何処に映っていたのか、さっぱりわかんねぇ!」
と明治生まれの婆ちゃんにも言われた。
それなりに頑張ったつもりでいたが、その努力は伝わらなかった。
テレビに出たと言っても自分にしかわからないんじゃ意味がない。
ワクワクしながら見ていた分、失望感と焦燥感が大きかった。
と、その時家の黒電話が鳴った。
彼女だった。
電話に出ると、勢いよく明るい声で言った。
「直ぐに解ったよ! 一生懸命踊ってたね! 踊りも上手くなったね!」
その言葉だけがご褒美だった。
この地球上にいる人間の中で、唯一の理解者がいた。
ジャニーズ・スマイルではない本当の心からの笑顔で僕は笑った。
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