Johnny's

第43話「横浜LoveStory」

たけJI

[box03 title=”第43話「横浜LoveStory」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]


彼女が通っている女子高と、僕が通っている高校を結ぶ路線が交わるのが田園調布駅になる。

そこから東急東横線に乗り桜木町まで行けば、海岸通りを歩いて15分程度で山下公園につく。

学校が終わると、急いで東急目蒲線の「鵜の木駅」に走った。

改札を走り抜け、ちょうど到着した電車に飛び乗った。

田園調布駅に着く。

反対側のホームで、彼女はべンチで一人ポツンと待っていた。

階段をかけ上がってきた僕を見つけると満面の笑顔になった。

「ごめん! 待った?」

息を切らせながらそう聞く。

「ううん、今来た所!」

優しい嘘だと解った。

僕が走って、階段を駆け上がってきたことが嬉しかったようだ。

僕は、滑稽な姿ではないかと、恥ずかしくなった。

丁度ホームに滑りこんできた急行に乗り込んだ。

他愛もない会話をしていると桜木町駅に到着した。

いつも思うが、彼女と話していると時間が経つのが早い。

改札を出て桜木町から山下公園に向かって歩く。

映画に出てきそうな綺麗な、街並みの中を並んで歩く。

暫く歩いていると急に彼女が立ち止まった。

振り向いて彼女を見る。

「手ぐらい繋いでよ!」

と少し怒ったように言った。

僕は手を握りしめた。

「まったく、女心解らないんだから!」

と彼女が言った。

「こっ恥ずかしいんだよ!」

と言い返した。

手を握ったまま山下公園に到着する。

海風が心地良い。

カモメが鳴いている。

眼前に広がる大きな海。

打ち寄せてくる小さな波。

その波の音が石の壁に当たって聞こえる端から2番目のベンチに座った。
 
9月になったばかりだと言うのに、港の風は秋の香りがした。

彼女の髪を激しくなびかせている。

「もうあれから1年も経つんだね」

と彼女が感慨にふけるように言った。

「じゃあ1年前と同じ事をしよっか!」

しかし、彼女は何も言わなかった。

少し強引に右腕で肩を抱き寄せると抵抗もしないのでそのまま唇に触れた。

そのキスの感触は1年前と同じだった。

唇を離して、彼女は目を開けるとおもむろに言った。

「ねぇ、あれに乗ろう!」

指差した先には「氷川丸」が停泊していた。

小学校の時に遠足で来たことが有る。

その時に氷川丸に乗った事を思い出した。

入場券を買い乗船する。

二度と出航する事がない船の中を二人で戯れながら探索した。

船の中をくまなく探索し、甲板に出る。

潮風を浴びながら、二人で海を眺めた。

「いつか、二人で本当に船に乗って旅行したいな!」

おもむろに彼女が言った。

子供のようにはしゃいでいたのに、その時だけ横顔が大人びて見えた。

肩に腕をまわす。

彼女がこちらを向く。

ゆっくりと顔を近づけ唇を重ね合わせた。

陽の沈んでいく船の上はただ風の音とカモメの鳴き声が聞こえる二人だけの時間だった。

横浜を後にして彼女の家がある二子玉川の駅まで向かった。

40分程度で到着する。

改札口まで送ると急に振りきこう言った。

「ここまででいいよ!」
 
そして、ポケットの中からおもむろに何かを取り出した。

「電車に乗ってから読んでね!」

と渡されたのは、折り畳まれた手紙だった。

彼女は小走りに改札口を出て、一旦コチラを振り向く。

笑って、手を振った。

僕も手を振る。

踵を返し、肩越しに手を振って歩き出す。

僕は言われた通り、電車に乗り手紙を開いた。

手紙には思いもしなかった事が書かれていた。

「1年前よりも、ずっとずっと、明の事が好きだよ。

でも、私がお荷物になる前に別れた方がいいのかなって思う。

一生懸命頑張っている明が好きだから、夢が叶うなら私はそれで幸せ。

明の夢の邪魔はしたくない。

これ以上いるともっと一緒にいたくて、わがままを言いたくなってしまうから。

だから大好きだから別れた方がいいと思うの」

最後の文字は涙で滲んでいた。

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