第93話「ファーストシーン撮影開始」
[box03 title=”第93話「ファーストシーン撮影開始」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
神奈川県二俣川にある運転試験場にいる。
電光掲示板に自分の番号が点灯した瞬間、僕は「やった!」と小躍りしたくなる程嬉しかった。
自動車の免許証を取った瞬間だった。
「これで何処へでも行けるし、緑山スタジオに通う事もできる! 」
「彼女を隣に乗せれば人の目を気にせずに何処にでも行ける!」
と束の間浮かれた気持ちであれこれ考えた。
しかし発行された免許証の自分の坊主頭の写真を見て我にかえった。
浮かれてはいられない!
役作りをしなければならない!
束の間の喜びを噛みしめながら芝居の事を考える。
当たり前だが完璧に台詞も覚えなければならない。
帰宅するとすぐに台本を何度も読み返した。
台本の初めの方は洋次と書かれた台詞の欄には
「・・・」
と点がやたら多く、ト書きに説明や心情が書いてあった。
しかし後半は長い台詞があった。
果たしてちゃんと覚えられるだろうか?
何回も台本を読みかえし自分が出るシーンを想像して芝居の練習をする。
家の中で暴れるシーン。
刑事に追いかけられるシーン。
裁判所で親に殴られるシーン。
寮で仲間にボコボコにされるシーン。
想像ではイメージが湧かない場面が多く、どう演じるか考えながらひたすら台本を読み返した。
声に出して何度も何度も繰り返し読んだ。
四畳半の部屋の中で思い付く限り想像を巡らせイメージを膨らませた。
やるだけの事はやり後は本番を待つだけである。
2日後その日を迎えた。
赤坂にあるTBSへ行きロケバスと言われるマイクロバスに乗り込む。
この日は若葉寮生は僕一人だった。
年配の役者さんが二人乗り込んできた。
挨拶をする。
他にも数人の役者さんが乗り込んできた。
今回だけ出演するエキストラの人たちだ。
そのためスタッフが乗り込む前に名前を確認しながらチェックをしていた。
今日は郊外での撮影から始まる。
ドラマの撮影は台本の順番通りにはしない。
場所やスケジュールにあわせてシーンは行ったり来たりする。
極端に言えばラストシーンを撮った後にオープニングを撮ることだってある。
役者はそのシーンに合わせて気持ちを作っておかなければならない。
当たり前だが、実際にやるとなると気持ちを作ると言う作業は大変だった。
春の穏やかな陽射しの中、ロケバスは八王子市の郊外の方へ向かっている。
長閑(のどか)な田園風景が広がっている。
子供のころ遠足に行く時にバスの車窓から見知らぬ町並みを見るのが大好きだった。
知らない土地、知らない建物を見ながらここで生活をしている人たちは何処で買い物をし、何を楽しみに生きているのだろう?
そんな答えの出ない空想をとめどなくするのが好きだった。
ロケバスの車窓から東京郊外を見ていると子供の頃のそんな記憶が甦る。
数週間前にカツラ合わせをしたことを思い出した。
坊主頭になる前のシーンはカツラをかぶって撮影をするからだ。
今日のスケジュールでは朝からカツラを着用して撮影する。
坊主頭にして1ヶ月。
3週間に1度は頭を刈り込む。
そのせいかこの頃はよく髪の毛が耳まで生えた夢を見る。
元通り髪の毛が生えていて髪をかきあげる。
ふっと目が覚めて頭を触ると坊主のままだった。
まだ未練があると言う事か?
ロケバスが目的地に到着する。
僕は直ぐに、渡された衣装に着替えてメイクを済ませるとカツラをかぶりスタンバイを整えた。
ジーンズに赤いスイングトップのジャンパーと言う姿である。
その間にフォルクスワーゲンのビートルに乗った矢崎滋さんがマネージャーと到着し、ほぼ同時にベンツのオープンカーに乗った柴田恭兵さんも到着した。
現場はにわかに活気づいた。
「おはようございます! 宜しくお願いします!」
と矢崎滋さんに挨拶をすると「いよいよ出番だね! 長かったでしょ?」と声をかけてくれた。
柴田恭兵さんに挨拶をする。
すると「宜しく!」と返事が返ってきた。
この日、最初に撮影するシーンは朝倉洋次が収容されている鑑別所から教護院に送致される場面である。
使われる車両は深緑色のジープだ。
このジープは愛誠学園の所有と言う設定である。
柴田恭兵さんが運転したジープがスルリと止まると矢崎滋さんに促され、渋々ジープに乗り込むと言うシーンから撮影が始まる。
この場面は、矢崎滋さんが話しかけてきても、そっぽを向き、柴田恭兵さんに話しかけられても視線を合わせず無視をする。
そして外をぼんやり見ているとジープは走り出す。
と言うシーンだった。
ロケで使うテレビカメラは1台なのでセリフを言うたびにカメラの位置を変える。
長い撮影が始まった。
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