第80話「ドラマ出演決定と彼女とのDistance」
[box03 title=”第80話「ドラマ出演決定と彼女とのDistance」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
TBSのドラマ制作部のプロデューサーと電話で話をしている事が信じられなかった。
プロデューサーは受話器越しに落ち着いた声でもう一度確認するように言った。
「今回は本当に丸坊主になって貰うんだけど問題はないですか?」
穏やかながら、質問の意図をしっかりと聞き取ろうとする気配が伝わってくる。
僕は切り返すように直ぐに返答した。
「はい! 問題ないです!」
「わかりました。」
と、安堵したのかドラマの設定を話し始めた。
「今回のドラマはオサラバ坂に陽が昇ると言うタイトルで、君には第4話を主役で演じて貰います。」
「はい。」
「どういう過程を経て教護院にやってくるのか? と言う役柄を演じて貰いたいと思っています」
と言われた。
「後は製作発表会を行いますが、その時に断髪式に出席して貰いたいんだけど、君の場合、断髪式から収録まで1ヶ月以上間が空いてしまうんだけど大丈夫ですか?」
と聞かれた。
特に決まったスケジュールが有るわけでは無い。
「問題無いです!」
と答えた。
「では、今回は第4話から参加して頂くと言う事で、宜しいですか?」
と確認するように言われた。
「はい! 宜しくお願い致します!」
そう答えて受話器を置いた。
少しの間、今の会話の内容を反芻して悦に入っていた。
信じられない話だが、TBSのゴールデンタイムのドラマで第4話だけとはいえ主役をやるのだ。
真っ先にこの喜びを彼女に伝えようと思った。
何時ものように2コールして1度切り、再び電話をする。
彼女が出た。
それを確認すると一気に捲し立てた。
「今、テレビ局の人と電話で話してTBSの金曜日の8時から始まる新番組で4話から登場する役で出演する事になったよ!」
と一気に言って「髪の毛丸坊主になるけどね!」と付け加えた。
「そうなんだ。良かったね。」
と、あっけない、気のない返事だった。
「どうしたの? 何かあった?」
「別に何にもないよ。」
「嬉しくない?」
少しの間、彼女の息遣いが受話器から漏れて聞こえてきた。
「微妙かな?」
「なんだよそれ?」
「何か遠い人になって行く感じがする。」
それは多分本音だろう。
元々ジャニーズに入る前からの付き合いだ。
「いつも仕事の事しか考えてないのね。」
と言う言葉に少しカチンときた。
今度は僕が黙った。
「本当に坊主頭になっちゃうの?」
「ああ。」
「何かショック。想像出来ないな。」
喜びを分かち合うつもりで電話したのだが何かがキレた。
「そうか解った! 電話して悪かったな!」
と言って受話器を置いた。
直ぐに電話がかかってきたが電話には出なかった。
心の中に隙間風が吹いていた。
彼女との電話を切って2階に上がった。
彼女が言う通り確かに仕事の事で頭は一杯だ。
何せ高校を卒業すると言うのに就職先も決まっていないのである。
ジャニーズ事務所に就職できる訳でもない。
進学する事や専門学校へ行く事も考えてはいない。
親にもさんざん言われたが、僕はこの後の人生をジャニーズで成功して「ダンスや芝居や歌で生きて行く!」と決めていた。
そして経済的に豊かになって、食うに困らないようになるまで、経済的な成功をするまでは芸能界にしがみついて生きようと思っている。
その為の手段がダンスや芝居であり、名前を売る事なのだ。
その成功によって初めて彼女との将来、結婚への道が開かれると考えている。
芸能界に突き進もうとしている自分と、高校を卒業をしたら銀行に勤めるだろう彼女とは物の考え方、感じ方、捉え方が違ってしまうのは否めない。
浮き足だった世界に生きようとする人間と将来を見据えてしっかり就職しようとしている人間の考え方の違いでもある。
ただ僕はテレビに出ると言う事よりも「仕事が決まった事」を一緒に喜んで欲しかった。
それが自分勝手だと言う事は解ってはいる。
彼女はきっと「彼氏が高校を卒業をしてもジャニーズジュニアとして毎週日曜日にダンスのレッスンをして、平日はプラプラしている人間になって欲しく無い」と思っているだろう。
ちゃんとした仕事をしない事に少しずつ苛立ちが募っている事を薄々感じてはいた。
高校卒業そして婚約結婚へ向かおうとしている彼女の気持ちと、これから芸能界に入って活躍してやろうと思っている僕の気持ちの隙間はやがて溝となって二人の間に存在し始める。
今、もしも「仕事を取るのか?」それとも「彼女を取るのか?」と二者択一を迫られたのならば、既に腹は決まっている。
「今は、仕事を取る!」
僕の人生において、今が1番の大切な人生の分岐点なのだと自覚している。
今を逃したらこんなチャンスは2度と無い事は解っている。
例え坊主頭になっても、4話だけの主役でも今回の仕事にかける僕の気持ちはぶれない。
彼女がいたから高校生活が続けられ楽しめた。
それはとても感謝している。
しかし、今は思い出に耽っている場合ではない。
別れる事も覚悟して、テレビドラマ『オサラバ坂に陽が昇る』に出演して結果を出さなければならない。
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