Johnny's

第131話「ジャニーさんの予想外のひと言」

たけJI

[box03 title=”第131話「ジャニーさんの予想外のひと言」”]

あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]

彼女を失った事は想像以上にこたえた。

心にポッカリと穴が開いたようで何をしてもボッーとしてしまう。

何を食べても美味しくない。

何を見ても楽しくない。

何もする気になれない。

別れて失ってみて初めてその大切さが身に染みて解った。

しかしもう遅い。

もう今更やり直す事は出来ない。

4年と言う長い間、お互いに過ごした青春時代を共有できる、唯一にしてかけがえの無い彼女を無くしたのだ。

落ち込んだその姿に家族も直ぐに気付いた。

「どうしたの? 何かあったの?」

と聞かれ僕は答えた。

「彼女と別れた」

すると僕以上に母親と祖母が悲しんだ。

「えっー! 別れちゃったの?」

「何でまた! あんないい娘いないのに! 」

と母親が言えば

「いつまでも仕事しないで踊ってるから、愛想つかされたんだべ!」

と祖母が言う。

別れた理由を聞く親に、理由が答えられない。

そして部屋に引きこもった。

彼女の「いつも頑張っているあなたが好きだった。一生懸命頑張っているあなただから好きでいられた。だから・・これからも好きなことを頑張って、一生懸命なあなたでいて下さい。」

その言葉に報いる為に、「ダンスを頑張ろう!」

と思えるまでに1週間以上かかった。

9月16日日曜日。

僕は日曜日のダンスレッスンに向かった。

前の週にレッスンを休んだので、3週間ぶりのレッスンだった。

テレビ朝日の第2リハーサル室で久しぶりにみんなと対面した。

ジャニーさんが来ると「ユーとユーとユーはレッスンが終わったら僕の車に乗って、芝郵便貯金ホールに行こう!!」と言った。

呼ばれたのは僕に木暮君、鈴木則行君、柳沢君の4人だった。

「時代はサーカスの像に乗って84」でMIEさんと同じ舞台で共演した4人だ。

「ユー達はヨンデーズでデビューさせよっか!」

と、冗談で言われた事があった。

一度は真に受けたがすぐに冗談だと解った。

きつい冗談だった。

そんな4人を引き連れて向かったのは、MIEさんのソロのコンサートだった。

レッスンが終わり、ジャニーさんの白いベンツに乗った。

芝郵便貯金ホールは少年隊の5回コンサートをやった会場だ。

懐かしくもある。

そのコンサート会場へ向かう途中にジャニーさんと皆、和気あいあいなムードで話をしていた。

すると何かを思い付いたように運転席から振り向き様に僕を見た。

「そう言えば、ユー! 車の免許を持っているんだっけ? 」

と聞かれた。

僕は、何か仕事を振られるのではないかと期待して答えた。

「はい! 普通自動車免許なら持っていますよ!」

すると予想だにしなかったひと事を言われた。

「ユー! マネージャーやらない? 」

「えっ? マ、マネージャーですか? 」

「ユーはさあ、マネージャー向きの性格してると思うのよ!」

「は、はぁ」

「シゲ(中村成幸現在は繁之)にも誰かつけなきゃならないし、少年隊もジュニアにも足りないし!」

すると、鈴木君や木暮君、柳沢君からも「マネージャー似合いそう! 」と言われる。

しかし当時のイメージからすると、マネージャーイコール使い走りと言うイメージしか無かった。

同じジャニーズジュニアだった、仲間のマネージャーをやるのは苦痛である。

そしてそれ以上にショックだったのは、「ユーはさあ、マネージャー向きの性格してると思うのよ!」

の一言だった。

ジャニーさんに言われたその一言は「もうタレントとして売る気はないよ! 」と言われたようなものだ。

話をはぐらかしながらも僕は谷底へ突き落とされたような気持ちになった。

芝郵便貯金ホールに着くとジャニーさんが挨拶に行きチケットを持ってやって来た。

MIEさんが横たわった写真に『NEVER forget MIE』と印字されていた。

1階席の15列の5番が僕の席だった。

皆横にで並んで座った。

開演を告げるブザーが鳴り響き、緞帳が厳かに上がって行く。

歓声と大音響の中、MIEさんがステージの中央に現れる。

「時代はサーカスの像に乗って84」で、同じ舞台にたっていたMIEさん。

「PINK LADY」復活コンサートで後ろで踊らせて貰ったMIEさん。

そのMIEさんが一人で舞台で歌っている。

迫力ある歌声が会場を包みこむ。

皆は盛り上がっているが、僕の心はここに無かった。

無くしたものの大きさ。

そして、それを乗り越えようとした矢先に宣言された、マネージャーへの誘い文句。

「ユーはさあ、マネージャー向きの性格してると思うのよ!」

ジャニーさんが言い放ったその言葉が頭の中でリフレインしている。

立ち直りかけた僕の心に追い討ちをかけた。

つまり、タレントには向かないって事だ。

この3年間頑張って来たのはタレントになる為だった。

ジャニーズジュニアからタレントとして、成功する為に頑張って来たのだ。

芸能界屈指のゴッドファザーであるジャニーさん。

数々のタレントを育て上げ、世に送り出した、ジャニー喜多川さん。

そのジャニーさんに「ユーはマネージャー向きの性格をしてる」と宣言されたのだ。

と言う事は、この先ジャニーズにいても、いや、ジャニーズ意外でも、「タレントとして成功する事はない! 」

と言われたも同然だ。

ジャニーズ事務所で数々の少年を見てきたジャニーさんの一言はことのほか重い。

目が霞んできた。

霞んだ先の舞台の上で、MIEさんが熱唱している。

僕は急に「ハッ」となった。

今、この瞬間、この刹那が「ジャニーズジュニアとしての最後の場所で最後の時間だ!」と思ったのだ。

横一列で並んでいる、木暮君、柳沢君、鈴木君、そしてジャニーさん・・。

手を出せば届きそうな場所なのに、もう届かない空間に一人入り込んでしまった。

今日、この日で、彼らと会うのは最後だろう。

そして・・

ジャニーさんに会うのもこれが最後だろう。

僕は、ジャニーズ事務所でマネージャーをやるつもりは毛頭無かった。

MIEさんの歌声が遠くに聞こえていた。

これが、ジャニーズジュニアとして最後にジャニーさんと木暮君、鈴木君、柳沢君と行ったMIEさんのライブチケット💦

長らくのご愛読並びに応援、ご声援、ツイート、リツイートありがとうございました!

いよいよ、次回最終話です。

第130話「last call~別離(わかれ)」へ第132話「(最終話)さよならジャニーズ!」

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■ この物語の始まり ■

第1話 「始まりはフォーリーブス」

■ 彼女との出会い ■

第12話「マッチと彼女とアルバイト」後編

■ ジャニーズに入った時の話 ■

第18話「初めてのオーディション」(後編)

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