第121話「少年隊ファーストコンサート・中編」
[box03 title=”第121話「少年隊ファーストコンサート・中編」”]
あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
少年隊のファーストコンサートの日が来た。
僕は朝の8時に「芝郵便貯金会館」に入る為に午前5時30分に起床した。
家を6時30分頃に出れば、7時30分には着くだろう。
余裕を持って出た方が良い。
案の定、電車は、通勤ラッシュの為に少し遅れ、郵便貯金会館に入ったのは8時10分前だった。
その時点で既に凄い人数のファンが入り口にいた。
会館に向かう途中で何人かの「ジュニア」と合流して一緒に楽屋に入った。
楽屋に入ると先ずは衣装のセッティングをしなければならない。
30分後には「リハーサル」をして、その後は10時、12時、14時、16時、18時と1日に5回のコンサートが待っているのだ。
コンサートは全28曲だ。
「少年隊ファーストコンサート」の曲順は以下の通りだ。
1 オーバーチュア
2 HELP
3 あなたに今GOOD-BYE
4 I’m So EXCITED
5 I Want you Tonight
6 トワイライト・フィーリング
7 恋は素早く(東山ソロ)
8 君の瞳に恋してる
9 アフリカ-ン
10 天使たちの場所(錦織ソロ)
11 ある日曜日の物語(植草ソロ)
12 質問の唄
13 空を飛べるか
14 母捨記
15 急げ若者
16 あいつとララバイ
17 横浜ABC
18 踊り子
19 A DAY
20 BLACK IS BLACK
21 GET LADY
22 サンキュー
23 ライアー
24 ピースオブマインド
25 ジャクソンズ・メドレー
26 ハッピー・ピープル
27 Can’t Stop
28 アンコール ~ローリングストーンズ・メドレー
この内18曲に出演する。
毎回衣装を変える訳ではないが、10着近くある。
楽屋まで戻っていたら間に合わない上、ジャニーズジュニアがみんな楽屋へ戻ってきたら大混雑になるのは目に見えている。
舞台の袖は、少年隊の早替えの衣装と舞台セットや小道具、イーグルスの衣装があるので、必然的に廊下や階段で着替える事になる。
しかも曲により捌ける場所や出る場所が違うのだ。
僕は出番によって捌けた場所に近い廊下や階段にビニールを敷き、着る順番に衣装を重ねた。
皆考える事は同じで、次から次にジュニアのメンバーが衣装を置きにきた。
少しでも舞台に近い場所が良い。
ステージから捌けたら、そのまま走って舞台の袖を抜けて廊下に出て、衣装を脱ぎながらセッティングした場所で着替える。
着替えが済むと、再び走って次の出番の場所へ行き、息を整えた頃にはもう出番である。
初めてコンサートに出るジュニアのメンバーは、リハーサルの時に初めて衣装替えが間に合わない事に気がつく。
着替え方を工夫したり、着替える場所を変えたり、他のメンバーに手伝って貰い出演していた。
それでも間に合わない場合は出番がカットされてしまう。
後日知ったエピソードとして、ジャニーズジュニアの石井哲也君はずっと「君の瞳に恋してる」を踊りたいと思っていて、遂にバックで踊るメンバーに選ばれた。
喜んで一生懸命振り付けを覚え練習して完璧に踊れるようになった。
次の曲の「アフリカーン」の練習中にボビーさんがジュニア全員に尋ねた。
「アフリカーンに出ていない人で、頭の部分空いてる人!? 」
ボビーさんと目が合い思わず手を上げてしまった。
本人は「何も考えてなかった」らしい。
「アフリカーン」の頭の部分は「連獅子」の格好をしなければならない。
銀色の和風の裃(かみしも)を着て、更に長いカツラを被るのだ。
振り付けが終わった後にどう考えても衣装替えが間に合わない事に初めて気が付いた。
石井君はボビーさんに申告した。
その結果「アフリカーン」ではなく「君の瞳に恋してる」の出番をカットされてしまった。
泣く泣くそんな逸話を話してくれた石井君は、その後プロダンサーとなり、今は立派にダンススタジオを経営している。
衣装のセッティングが終わり楽屋へ戻ると、リハーサル開始15分前になっていた。
緊張感が増してくる。
オープニングの衣装に着替えその時を待った。
少年隊の楽屋前が明るくなった。
ワイドショーのテレビカメラとリポーターが来て少年隊を取材していた。
「元気です! 」
「これから5回公演頑張ります!! 」
と元気良く受け答えをしていた。
リハーサルを入れると6回、同じショーを演じる事になる。
コンサートの中身はトークを差し引いても1時間20分はある。
全力で踊らなくても、ステージで動き、走って廊下に行き、着替えてまた次の曲でステージに戻る。
それを繰り返すだけで相当の運動量だ。
その間に客席から出る為に階段の登り降りや、上手から下手への移動も加わるのだ。
当たり前だが1度コンサートが始まってしまうと、座っている時間は無い。
「少年隊ファーストコンサート」のゲネプロリハーサルが始まった。
僕と何人かのジュニア達はロビーに出て客席の入り口の扉前でスタンバイをした。
音楽が聞こえて来る。
扉を開け誰もいない客席の通路をステージに向かって歩いて行く。
後2時間もすれば満席のファンで埋まるだろう。
落ち着いてゆっくりと歩きポジションにつき座る。
舞台上に少年隊が現れピンスポットで3人の顔が浮かび上がる。
「♪ when I was younger So much younger than today ~♪」
「ビートルズ」の「HELP !」を3人が歌い出す。
それに合わせてステージへ上がり移動をする。
フレーズを歌い切ると突然明るくなり、大きな音楽と共に「あなたに今、good-bye」に変わる。
途中まで踊ると舞台から袖に走って捌ける。
明るいステージから暗い袖に入り駆け抜ける。
そのまま狭い廊下に出てすぐに衣装替えをする。
ここは1曲あるのでまだ余裕がある。
衣装を脱ぎ、次の衣装に着替え靴も履き替え、脱いだ衣装を軽く折り畳みまた早足で客席に向かう。
「非常口」のライトが光る階段を降りてドアを開け再びロビーに出る。
次の5曲目「I Want you Tonight」は再び客席から出るのだ。
そしてステージに上がると続けて6曲目の「トワイライト・フィーリング」をセンターで踊る。
1曲終わると直ぐに袖に捌ける。
次の曲は「ヒガシのソロ」そして、その次「君の瞳に恋してる」は出番が無いので2曲余裕がある。
しかしここでゆっくりはしていられない。
廊下に出て今まで着ていた衣装を脱ぎ、レオタードの下を履き、スニーカーからダンスシューズに履き替える。
次の9曲目「アフリカ-ノ」の衣装は上半身は裸なのでこれで衣装替えは終わりだ。
脱いだ衣装を折り畳み、オープニングで着た衣装の下に置く。
こうすれば1回目のコンサートの「セッティング」の時間が短縮される。
衣装の準備が終わりようやくここで一息入る。
20メートル先にジャニーズジュニアの楽屋が有り、その前に長机が用意され冷えたスポーツドリンクが並べられている。
ここで水分を補給する。
楽屋を見ると何人かのジュニアがいた。
出番が少ないメンバー達だろう。
一息にスポーツドリンクを飲み干すと僕はゆっくり舞台の裏に歩き出した。
ちょうど「ヒガシのソロ」が終わった所だ。
舞台の袖に行き後ろの方で軽くストレッチをすると「銀色の裃の連獅子」の格好をした3人がスタンバイをしていた。
石井君たちである。
「アフリカーン」の頭の部分に出るのだ。
「君の瞳に恋してる」を踊ったメンバーが捌けて来た。
同時に「アフリカーン」のイントロが始まる。
「少年隊」と「イーグルス」はこの「イントロ」だけで「アフリカーン」の衣装に着替えるので「超がつく早替え」である。
勿論衣装替えを手伝ってくれている人がいる。
「アフリカーン」が終わると次の10曲目は「ニッキのソロ」である。
この間に「アフリカーン」の衣装の上にジーパンを履きGジャンを着て「かっちゃんのソロ」から5曲続けて踊る。
『母捨記(ははすてき)』は芝居なので厳密には踊りではないが、絶叫しながら演じるので見た目以上に体力を消耗する。
疲れた所で15曲目「急げ若者」と16曲目「あいつとララバイ」のダンスナンバーが2曲続く。
相当きついが目の前には、少年隊が歌って踊っている。
彼等の方が大変なのだ。
負けてはいられない。
2曲踊り終わるとようやく一息つける。
17曲目「横浜ABC」と18曲目「踊り子」の2曲は出ない。
この間に次の19曲目「A DAY」の衣装に着がえ小道具の「ハンドライト」を準備する。
この曲が終われば20曲目の「BLACK IS BLACK」、21曲目「GET LADY」22曲目「サンキュー」23曲目「ライアー」24曲目の「ピースオブマインド」まで出番はない。
この間に上手で脱いだ衣装、下手で脱いだ衣装を整える。
衣装替えをしてスタンバイをするとここからは25曲目「ジャクソンズ・メドレー(シェイクユアーボディー~スリラーオールナイトダンシング)」26曲目「ハッピー・ピープル」27曲目「Can’t Stop」そしてラスト28曲目、アンコール曲の「ローリングストーンズ・メドレー」までずっと踊っている。
勿論、途中で衣装替えもありステージと廊下をダッシュで走り回って踊り続けた。
リハーサルが終わった。
かなりの疲労感だ。
楽屋前のスポーツドリンクを飲んだ時にスタッフが大きな声で言った。
「客入れしまーす! 本番30分前です! 」
その声に「フッー」とため息を吐いた。
今、終わったばかりでまだ衣装を脱いでもいない状態である。
全ての衣装をセッティングし直した時点で本番15分前だろう。
それを今から「5回」繰り返すのだ。
長い戦いが今始まった。
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