Johnny's

第51話「風邪をひいた日のできごと」

たけJI

[box03 title=”第51話「風邪を引いた日のできごと」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]


先週の事だった。

朝、目が覚め、起きようとしたが身体が怠い。

少し寒気がする。

ダンスのレッスンのあと、汗で濡れたTシャツを着たままでいたせいだろうか?

大した事は無いだろうが、咳も出ている。

風邪をひいたようだ。

これから起きて、学校へ行くのが怠い。

彼女には申し訳ないが、このまま休んで寝ていよう。

今から、電話してももう彼女も家を出ている可能性が高いし、実家は会社でもある。

電話すれば、彼女の親か、下手をすれば会社の事務の人がとってしまう。

僕はそのまま、横になった。

母親が起こしに来た。

「体調悪いから今日は学校休む! 学校に電話しておいて!」

と言って再び眠りについた。

「彼女から電話よ!」

と母親に起こされた。

待ち合わせの7時に来ないからか、7時30分頃に駅の公衆電話から電話をかけてきたようだった。

しかし、起きて下まで降りるのが怠い。

「寝てるって言っておいて!」

と伝え、再び眠りについた。

人の気配を感じて目を覚ます。

驚いた事に制服姿の彼女が枕元にいた。

「えっ?」

僕は声にならない声をあげた。

二子玉川駅から電車とバスを順調に乗り継いでも40分以上はかかる筈だ。

先ほどの電話から30分も経っていない。

「大丈夫?」

と心配そうに顔を覗きこんできた。

「ちょっと怠かっただけ! 熱も無いし大丈夫!」

と言うと安堵したのか急に大きな声で言った。

「もう、どれだけ心配したと思ってんのよ!」

「ゴメン! でも、どうやってこんな早く来れたの?」

とはぐらかすように尋ねる。

「タクシー!」

ちょっとムスッとしている。

「学校は?」

と聞く。

「今日は休んだ!」

と言った。

入学以来1度も遅刻も休んだ事もないと自慢して言っていたのを思い出した。

「ゴメン!」

言葉がそれしか出てこない。

少し間を置いて彼女はゆっくりと言った。

「いいの! 私がそうしたいからそうしたの! 今日はずっと一緒にいてあげるね!」

と彼女の方から唇を重ねてきた。

「風邪がうつるよ」

「私にうつせば早く治るでしょ!」

と言ってもう一度唇を重ねてきた。

「私もフトンの中に入っていい?」

答えるより先に彼女が入ってくる。

彼女の髪の匂いが心地良かった。

僕はふたたび深い眠りに落ちた。

翌日には体調も戻り、二子玉川のホームで落ち合った。

いつも通り一緒の電車に乗り込み通学をした。

もう、咳も止まっていた。

他愛のない会話をしながら一緒にいれる唯一の時間。

それが通学の僅かな幸せなひと時だった。

そうして迎えた金曜日、彼女の学校の学園祭当日の朝の事だった。

いつものように大井町線の大岡山の駅まで一緒に電車に乗って降りる間際だった。

「今日学校終わったら会いたい!」

と、彼女が言った。

「いいけど、今日学園祭でしょ?」

と聞き返す。

「明が来ないなら意味ない!」

「じゃあどうする?」

「二子玉の改札口に4時30分!」

駅に到着してドアが開く。

「はいよ!」

そう言ってサラリーマンの波に押し出されるように電車を降りた。

彼女の方から強く要求する事は滅多になかった。

少しでも週末会えない分、聞いてあげられることは聞いてあげたい。

そう思った。

放課後二子玉川駅の改札口を出ると目の前の時計は4時10分だった。

20分もすれば彼女がやって来る。

改札口の反対側にある雑貨店を窓越しに眺める。

クリスマスには彼女に何をプレゼントしようかと思いながら眺めていた。

そんな事を考えながら品物を見るのも悪く無い。

ふと時計を見ると4時30分を指していた。

僕は改札口へ向かった。

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