それでも夢はあきらめない
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Johnny's

第124話「芝居と彼女とジャニーズと」

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第124話「芝居と彼女とジャニーズと」

あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと 

時代はサーカスの像に乗って84の稽古場にいる。

午前中の稽古が終わり、昼休みになった。

出演者は弁当を持って来たり、途中で買って来たり、直ぐにご飯を食べに出たりと様々だった。

僕は鈴木君、柳沢君、木暮君に声をかけた。

3人とも外食すると言ったので、少し待って一緒に稽古着のまま外に出た。

外に出ると直ぐに吉野家のオレンジの看板が目についた。

昼時はどこも混雑しているし稽古着姿で街をうろつくのも気が引けたので、道路の反対側にある吉野家で済まそうと提案する。

しかし、他の3人は難色を示し別の場所を探すと言うので仕方なく1人で道路を渡った。

鈴木君はイメージ的にも吉野家には行かないと思っていたが、柳沢君と木暮君は読めなかった。

決して仲が悪い訳ではない。

ご飯を食べるのに待つのは苦手なだけだ。

1時間しかない休憩時間を店を探したり、歩いたり、待ったりして時間を気にしながら食事をするよりも、早く済ませてのんびりしたいだけである。

吉野家に入ると、既に宇梶さんがカウンター席に座っていた。

まわりのサラリーマンと比べると、身体の大きさとルックスの良さが一際目立っている。

隣が空いたので挨拶をして座った。

「来て直ぐに座れるなんてラッキーだね!!」

と話しかけてくれた。

宇梶さんは座るまでに、だいぶ待たされたらしい。

僕が座ったのと同時に宇梶さんの前に大盛の牛丼が運ばれて来た。

「お先に!」

と言って食べ始めた。

僕は牛丼の並みと玉子を注文して、目の前にあるスライド式の保冷庫の中から、お新香をを取り出して七味唐辛子と醤油をかけた。

お新香を一口、二口と食べている間に、サラリーマンが2人、3人と右の扉、左の扉から入って来た。

6人程の団体さんが入って来ると一瞬にして行列が出来た。

そんな様子を見ながらお新香を食べていると、目の前に牛丼が運ばれてきた。

食べ始めようとした時に「じゃ、お先に! 」と宇梶さんは席を立った。

食べる早さに驚いた。

その後ろ姿を見送り、牛丼に卵をかけて、紅しょうがをのせて口に頬張った。

隣の席には、スーツ姿のサラリーマンが座った。

落ち着いて食べれる状況でもないので、急いでかきこんだ。

食べ終わる頃に、柳沢君と木暮君が入ってきた。

食べ終わり、近くに行く。

「最初からここにすれば良かった!」

「どこも混んでいて時間が無いから戻ってきた!」

と言った。

鈴木君はパンを買って食べるらしい。

宇梶さんの真似をして「じゃ、お先に!」

と言って吉野家を後にした。

昼休憩が終わって、稽古が再開された。

オープニングシーンの稽古が始まる。

今回の振り付はボビーさんだ。

振り付けと言うよりは演出の延長である。

数秒間、演目のワンシーンを出演者が全員でポーズを作る。

リズムに合わせてライトが消え、再びライトが点くと全く別のワンシーンに変わっていると言う主旨である。

『時代はサーカスの象に乗って』と言う作品は、小説で言えばショートショートである。

一つの演目は数分~数十分で完結し、次の話しへと変わるのだ。

オープニングで、それぞれのシーンの印象的なポーズを演じた。

演出家である萩原朔美さんは、独特の演出方法を行う。

役者が演じている最中は片手にカセット式のポケットレコーダーを持ちそれに呟いている。

その場面が終わると、皆が和になって座りカセットを巻き戻し呟いた声を再生するのだ。

「右から3番目の人、もっと内側で低い体勢で」

とか

「MIEさん、このシーンでは笑わない」など細かい演出が録音されている。

それを聞きながら、今、演じた出演者に丁寧に説明をすると言う手法を使っていた。

解りやすく、やりやすい。

稽古は充実していて、集中しているせいか、瞬く間に時間が過ぎていった。

稽古が終わり外に出ると4月の夜風が心地良い。

世間ではゴールデンウィークを迎えようとしているが、僕は殆ど稽古である。

帰宅して彼女に電話をしようと思った。

ここの所、2日から3日に一度の電話になり、暗黙のうちに、交互に電話をするようになっていた。

高校生の頃は同じ感覚でいられたが、社会人になって1年が経った。

今は、銀行で働いている彼女との距離が少しずつ開いてしまっている気がしていた。

彼女も気を使っているのか、仕事の愚痴や人間関係などは話さない。

100万円の札束の数えかたや、早く数える方法を面白く話してくれたが、高校時代に比べ、共通の話題が少なくなってきたのは事実だ。

僕もジャニーズの話しとかは彼女が聞きたがらないので話さなかった。

必然的に会話が途切れがちになってしまう。

2年前は、3時間、4時間、話してもまだ、話し足りなかったのに、今は10分持てば良い方である。

今回の公演は、渋谷のPARCO PART3 で9日間に渡り上演される。

彼女の家からも新玉川線ですぐだし、一度位は彼女に見て欲しいと思った。

夜の10時過ぎに、彼女の家のダイヤルを回す。

2回鳴った所で1度切り、もう一度掛け直す。

家の電話はダイヤル式の黒電話だ。

彼女の家は4階建てのビルになっていて3階が事務所で4階が自宅だった。

彼女の家の電話は事務所と同じプッシュ式で内線で家と事務所に変えられる。

僕からの電話の時には事務所に降りて、そこで話をしていると言っていた。

そのため2回鳴らしていったん電話を切ると、5秒以上の間を開けて電話をかけなおす。

ツーコールの3回目で彼女が出た。

「珍しいね!」

と嬉しそうな声がした。

「どうしたの? 何かあった?」

と明るい声だった。

「と言うわけじゃないけれど、今度、舞台やるから見に来て欲しいなと思ってさ!」

「うん。多分会社の友達と見に行くよ!」

「じゃあ、来れる日が決まったら、チケット取るから連絡して!」

「うん。解った!」

とここまではテンポの良い会話だった。

「ゴールデンウィーク中はずっと練習してるの?」

と彼女が聞いてきた。

「ずっとじゃないけれど、だいたい稽古かな」

「ふーん」

とちょっと拗ねた。

「ディズニーランドはいつ連れて行ってくれるの?」

と聞かれても日曜日はダンスのレッスンで、いつ仕事が入るか解らないので確約は出来ない。

「うーんと、夏休みまでには行くよ!」

「早く行かないと汚れちゃうよ!」

と言う彼女の発想に笑った。

「掃除する人もいるし、そんな直ぐには汚れないでしょ!」

「えー毎日毎日、何万人も歩いてるんだよ! 直ぐに汚れちゃうよ! 私はまだ綺麗なうちにあきらと行きたいの!」

「うん、解ったよ!」

とは言ったものの、正直ディズニーランドにはそんなに興味は無かった。

19歳の男には「ミッキーマウス」や「ドナルドダック」に夢中になる意味がよく解らない。

どちらかと言えばまだ富士急ハイランドの方がいいと思ったぐらいだ。

そんな思いを断ち切るように彼女がつぶやいた。

「私はあきらとディズニーランドに行くのが夢なんだからね! ちゃんと叶えてよね!」

「夢」と言う言葉を使われると弱い。

男たるもの、夢を叶えてあげてナンボだと思ってしまう。

「解ってるって! ちゃんと叶えるよ!」

そう言ったあとも他愛ない会話を20分ぐらいして電話を切った。

そう言えば、付き合って3年になると言うのに思い出に残るような場所には行っていない。

お互いの家を行ったり来たり、デートで行くのも、渋谷、新宿、横浜ぐらいだった。

プールには行ったが海には行った事がない。

仕事が落ち着いたら何処か旅行にでも連れて行ってあげよう。

と思った。

ディズニーランド以外にも何処か思い出に残る場所へ。

翌日から稽古の日々が続いた。

稽古場ではアーティストの日比野克彦さんが段ボールを使ったピストルやオブジェなどの作品を持ち込んでいた。

そのピストルを見た演出家の萩原朔美さんが言った。

「1個500円で販売しよう!」

プランを練り、田舎の駅で駅弁を売るようなスタイルで、首から箱をぶら下げて「ピストルいかがですかー!」と言って、開場してから開演するまでの時間に販売する事になった。

面白いアイデアだ。

会場に入ったら演者は既に色々な芝居を始めていると言う主旨である。

稽古が進む中で強く注意された事があった。

戦争中の兵士の役をやっているシーンで、スローモーションで銃を撃っているような動作をしていた。

例によって、その場面が終わると萩原さんはカセット式のレコーダーを再生する。

すると「このシーン笑わない!」と大きな声で入っていた。

対象となったのが僕と柳沢君だった。

「笑っている訳ではない」のだが、笑っているように見えてしまう。

この頃は芝居の「し」の字も知らなかった。

表面的な芝居と段取りだけで動いている。

ジャニーズジュニアで培った「苦しい時ほど笑って踊る」と言う癖のようなものが、芝居をしていても表情に現れてしまう。

「人に見られている」と言う意識が働き、本来演ずるべき役に成りきれないのだ。

そしてダンスに比べてスローモーションで動く芝居は難しかった。

BGMが流れるとついついリズムに合わせしまう自分がいる。

「踊りじゃないんだから、音楽に合わせて動かない!」と言われた。

当たり前の事だし解っているが、いざ動くと中々出来ない自分に苛立った。

心の底から感じて、それを表現するのが芝居であるなら、そこに達するまでにどのぐらいの努力が必要なのだろうか?

演技をしていても、もう一人の自分が話し掛けてくる。

「今、そうしなきゃいけないから動いただろう!」

「 その構え方は格好悪いな! もっと真剣な顔をしろよ! 」

もう一人の自分との戦いが始まった。

戦争のシーンなのに笑ってるような顔になってしまうと怒られた場面。

筆者と、柳沢超(後の忍者のリーダー)と、演出家、萩原朔美さん

時代はサーカスの像に乗って84’チラシ

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たけx1
別名:@moonwalker_take。 53歳、2児の父親離婚バツイチ現在独身。 50を過ぎて、未来の自分のために、今までお世話になった方々のために、ブログを通じて夢見る人生を生きていく事を発信していきたいと思います。