Johnny's

第128話「最初で最後のディズニーデート」

たけJI

[box03 title=”第128話「最初で最後のディズニーデート」”]

あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]

ジャニーズに入って3回目の夏を迎えた。

松島トモ子さんの公演で、「舞台で踊る楽しさ」と更に「ダンスを上手に、大人っぽく踊りたい!」と思った。

しかし終わった後は、ジャニーさんからも事務所からも何の連絡も無かった。

煩わしい蝉の鳴き声を聞きながら、いたずらに時が流れて行くのをただ、何もせずに過ごしていた。

ジャニーズに入って最初の夏はまだ高校生で、初めてテレビに出て少年隊のバックで踊り、秋に向けてダンスのレッスンに夢中だった。

2回目の夏はテレビドラマ「オサラバ坂に陽が昇る」に出演し、終了後は直ぐにテレビドラマ「噂のポテトボーイ」に出演が決まり、ロケをしていた。

そして迎えた3回目の夏は、3日間の舞台こそ出演したものの、その後何も無いまま終わろうとしている。

お盆が過ぎても何の連絡も無かった。

夏の終わりを感じる。

彼女と出会ったのはジャニーズに入る前、4年前の夏である。

高校2年の夏休みのアルバイト先で出会い、付き合い始めた。

ジャニーズに入る前は普通のカップルだった。

毎週末には映画を見に出かけたり、買い物をしたり、食事をしたり当たり前の事を当たり前にしていた。

しかしジャニーズに入ってからは、毎週末はダンスのレッスンがあり、デートらしいデートはしていなかった。

売れている訳でも無いのに、僕は彼女と人混みや行楽地に行くのを極力避けていた。

そこにもしも、ファンがいたり、ジャニーさんの耳に入ったらと言う事を恐れていたのだ。

今、少しだけ後悔をしている。

彼女と楽しく過ごした思い出が、高校を卒業してから1年半が過ぎようとしているのにまるで無い。

彼女に対して申し訳ないと言う気がしてきた。

「何かしないと」と心の中で呟く。

その夜、彼女から電話がかかってきた。

3日ぶりの電話である。

案の定、彼女が言った。

「ディズニーランドはいつ行くの?」

彼女の口癖になっていた言葉にピリオドを打たなければと思った。

「今週の日曜日に行こう!」

と言う。

「えっ! 本当? 」

明らかにワンオクターボ高い声が返ってきた。

「うん。今週の日曜日に行こうよ! だいぶ待たせたからね!」

「ダンスのレッスンはいいの?」

「ここの所、仕事もないし、1日ぐらい休んだって大丈夫だよ!」

「わー! 嬉しい! 何を着て行こうかなー? 楽しみー! 」

受話器の向こうから嬉々とした声が伝わってくる。

こんな事ならもう少し早くに行けば良かったと思った。

当日は朝の7時に二子玉川駅で待ち合わせ、地下鉄で東西線に乗り換え、浦安駅からシャトルバスで行く事を話して電話を切った。

受話器を戻して2階に行こうとしたその時に電話が鳴った。

もしや彼女かなとも思い電話に出る。

「もしもし!」

「いやいやタケ先輩! 久しぶり! 」

声の主はオサラバ坂に一緒に出演した俳優、斉藤康彦君だった。

先月、オサラバ坂のプチ同窓会をした時に久しぶりに会い、近々遊ぼうと約束をしていたのを思い出す。

彼にも彼女がいて、車で家に来てくれた事もありお互いこの夏にダブルデートをしようと話していたのだ。

今週の日曜日にディズニーランドに行く事を話すと、彼らも行こうかどうしようか迷っていると言った。

僕は半ば強引に二子玉川駅での待ち合わせ時間を告げる。

すると「出来るだけその時間に行くようにするけど、相方次第かな? でもディズニーランドには行くから! 」と言った。

二人きりのデートも良いのだろうが、ダブルデートの方が盛り上がるだろうと思ったのだ。

斉藤君は話術に長けている上に気が利く。

僕は勝手に、斉藤君達とダブルデートをしてディズニーランドで過ごす1日を思い描いていた。

日曜日の朝、僕は予定通りに6時30分に家を出て二子玉川駅に向かった。

久しぶりに楽しい1日を過ごせると思った。

電車に乗り二子玉川駅に到着すると一番前の車両のあたりで降りる。

そこには既に彼女が待っていた。

タンクトップにアロハ風のサイケなシャツを着て、チノのショートパンツに編み上げのサンダルを履いていた。

どこか大人っぽく、それまでの「可愛いい格好」とはまるで違っていた。

対して僕は相変わらずな白いジーンズにTシャツの上に薄いグリーンとグレーのボーダーの半袖シャツを着ている。

正直、ちょっと不釣り合いな格好だと思った。

「おはよう!」と挨拶をする。

と直ぐに「実はさあ、斉藤康彦君も今日、彼女とディズニーランドに行くらしいから、一緒に行こうよ!」
と言った。

彼女は「ふーん、そうなんだ」とどちらでも良いようなちょっとトーンダウンしたような返事をした。

「どうせ遊園地に毛が生えたものだろう」

と思っていた僕は、何も調べていなかった。

二子玉川駅のホームで彼女と少し立ち話をする。

どうせなら、4人でディズニーランドに行った方が楽しいと思ったからだ。

しかし、電車を1本、2本とやり過ごすが、斉藤君達がくる気配はない。

家に電話をした所で、既に出ていたら、いつ来るか解らない。

携帯電話が無い時代である。

連絡を取る手段がないのだ。

彼女も言葉は穏やかだが、内心ちょっと怒っているような気がしたので、仕方なく4本目の電車に乗り込んだ。

同じ目的地に行くのだから、向こうで会えるだろうと高を括っていた。

この時点で20分程の時間をロスした。

田園都市線は二子玉川から新玉川線に変わり、渋谷から先は半蔵門線と呼び名が変わる。

途中で東西線に乗り換えて浦安駅に向かった。

浦安駅前から東京ディズニーランド行きのシャトルバスに乗り、ディズニーランドへ向かう。

さすがにディズニーランドが近くなってくると気分は高揚した。

初めて来る場所での彼女とのデート。

何年ぶりだろうか?

他愛の無い話しをしている内にディズニーランドに到着した。

バスを降りて入場口に向かうと既に何列も長い行列が出来ていた。

その内の近い列に並ぶ。

この列に並んでいれば、バスで斉藤君達が来れば見つけ易いだろう。

そう思い後ろに人が並ぶたびに、そしてバスが来るたびに、それらしい姿を探してキョロキョロと落ち着きなく振り返った。

そんな姿に彼女は何も言わなかった。

自分たちが進むのが早いのか、後ろに行列が出来て行くのが早いのか解らないが、後数人で入り口と言う所まで来た。

そこからはもう後ろの方に斉藤君達が並んでも解らない程の長い行列になっていた。

僕はここで探すのをあきらめ彼女とチケットの相談をする。

順番が来た。

入場券とアトラクションに乗れるチケットが付いているビッグ10と言うチケットを2枚購入した。

チケットにはA券1枚、B券1枚、C券2枚、D券3枚、E券3枚、とアルファベットの券が付いている。
E券がスペースマウンテンや、カリブの海賊、などの手の込んだアトラクション系、D、C、B、Aと下がるに連れてお子様向けのアトラクションになって行くのだ。

ディズニーランドの中に入る。

想像していた何倍もの広さと、何よりも人の多さと園内の複雑な作りに驚いた。

パンフレットを見ながら、彼女と行き先を決める。

まずは人気のアトラクション「スペースマウンテン」に乗る事にした。

トゥモローランドと呼ばれるエリアへ向かうと直ぐに長い行列が出来ているのを見つけた。

来ていきなり行列に並ぶのもどうかと思い「どうする? 」と彼女に聞いてみる。

「何処に行っても混んでるのは一緒じゃない?」

と言われそのまま行列に並んだ。

並んだ先から後ろに人が並んで行く。

数分のためらいは、そのまま行列に反映される。

この行列に並んでやっと落ち着き、彼女を見ながら話しをし始めた。

行列に並んで折り返すたびに、斉藤君達が並んでいないかを確認する。

午前中だと言うのにジリジリとした日射しが照りつけ、焼けるように熱い。

日陰で並んでいる内は良いが直射日光を浴びる場所に来るとおのずと口数が減ってしまう。

そんな事を繰り返しながらようやくエスカレーターの前にたどり着き建物の中に入る。

「やっと中に入れるよ!」

と彼女と話した。

中に入れば直ぐに乗れるものだと思っていたが、そこからが長かった。

灼熱地獄のような暑さからは解放され、冷房が効いているのでまだ救われるが何処まで続くのか解らない行列に嫌気がさしてくる。

嫌気がさすと会話も減ってしまう。

行列が折り返すたびに再び斉藤君達の姿を探す。

「これだけ人がいたら見つかる方が奇跡だよ!」と彼女が言った。

「まあね!」

と言いながら僕はまだ奇跡が起きると信じていた。

1時間以上の時間を費やし、やっとスペースマウンテンの乗り場に到着した。

二人でコースターに乗り込む。

急な坂をゆっくりと登って行くと途中でドライアイスの霧が吹き付けている。

それが過ぎると頂上に到着して真っ暗な宇宙空間の中に落ちていった。

暗闇の中、右に左に上下に揺れながらコースターは、ものの数分で出口に到着した。

シャトルから降りながら「あれだけ待ってもう終わりかよ!」と言った。

彼女は笑っていた。

スペースマウンテンの後にハンバーガーを食べて、昼食を済ませる。

その後は休憩を織り混ぜながら時計回りに、カリブの海賊、ジャングルクルーズ、ウエスタンリバー鉄道を制覇した頃には夕暮れ時になってしまった。

どのアトラクションも1時間以上並んで乗ったためにそんな時間になってしまったのだ。

それでもチケットを買い足してホーンテッドマンションに向かった。

彼女は文句も言わずに付いてきてくれた。

「ホーンテッドマンション」に並び始める頃には夕闇が迫り一段と雰囲気を醸し出していた。

その頃から僕はやっと今日は斉藤君達とは会えないだろうと腹を括り始めた。

心無しかカップルが多い気がする。

しかしその中から斉藤君達とばったりと会う確率はどのくらい低いだろう。

「やっぱり今日は会えなさそうだなぁ」と呟いた。

「今頃~? これだけ人がいるんだから無理だよ~、それよりさぁ、あのカップル彼女は綺麗だけど何であの彼氏なんだろうね!」と言った。

彼女が言った方を見ると目鼻立ちの整ったスラリとした女性と、かなりずんぐりとした体型の20歳くらいのカップルが列に並んでいた。

美女と野獣と言った感じである。

確かに女性の華やかさに比べて男性のファッションなども含めて不釣り合いであるのは否めない。

すると今度は「あのカップルはお似合いだね! 」と別のカップルを見て言った。

そこには同じくらいの背丈でお揃いのジーンズにTシャツ、仲良く手を繋いでいるカップルがいた。

付き合い出した頃は良く手を繋ぎ、それだけでドキドキしたものだ。

今は手も繋がなくなってしまった。

「今さら」と言う思いがどこかにある。

果たして自分たちはどう思われているのだろうか?

暫くはそんな会話で盛り上がっていた。

ホーンテッドマンションの中に入ると不思議な部屋に通される。

僕はこのまま歩いて行く「お化け屋敷」みたいなものだと思っていた。

だが途中でライドと呼ばれる卵形の乗り物に乗った時には感動した。

彼女と二人で揺られゆっくりと進むこのアトラクションは気に入った。

ホーンテッドマンションから出ると「これは楽しかったね! 」と彼女に聞いてみた。

すると「うん! 凄く楽しかった! 」と言った。

その後、時折休憩を織り混ぜながら「スモールワールド」「ピーターパン空の旅」など乗れるだけアトラクションに乗りまくったが、それでもとても全部は乗りきれなかった。

A券とB券C券が残っているがもう今日は乗る事は出来ない。

「又来ればいいっか!」と僕は言った。

が彼女は聞こえなかったのか何も言わなかった。

閉園時間が近づきお土産を買うためにワールドバザールへ向ったが店の中の混み具合に辟易した。

「何か買う? 」と聞いてみる。

「弟と妹たちに何か買って行ってあげないと・・・」

と困った顔をした時に、彼女の都合を何も考えていなかった事に気がついた。

「ゴメン、そうだよね!」と言って人混みをかき分けながら混みあった店内の中に入って行く。

こんな事ならもっと早く気が付き、お土産を見て回る時間を作ってあげれば良かった。

そう思った所で後の祭りである。

店内に殺到している人はみな同じ気持ちで土産物を探しているのだろう。

進めず、戻れずのような、人並みに揉まれながら彼女はお土産を見ていた。

ギリギリの時間までお土産を見てまわり、かろうじて買う事は出来た。

閉園を告げるアナウンスが流れる中、ディズニーランドを後にした。

入場口を出てバス乗り場へ向かう。

バス乗り場にも長い行列が出来ていた。

流石に1日中歩き回り疲れて話す事が無い。

無言のままバスを待つ。

それでもバスが来る度に行列は減って行くので、思っていたよりは早くバスに乗る事が出来た。

夢と光の国ディズニーランドを後にする。

とうとう斉藤君に会う事は出来なかった。

思えば朝から昼過ぎまではずっと斉藤君達と合流する事を考えていた。

出発時間を遅らせなければもう1つアトラクションに乗れたかも知れない。

暑さと行列の待ち時間、そしてアトラクションに乗った事ぐらいしか思い出が無い。

キャラクターのミッキーやミニー、ドナルドダックとは無縁であった。

パレードやショーなども見てはいない。

1枚の写真すら撮ってはいない。

ただひたすらに、行列に並んではアトラクションに乗った記憶しか残っていなかった。

バスは浦安駅前に到着した。

バスを降りると駅とは反対側の商店街が賑っているようで、多少心をひかれたが、疲れた身体と持っている荷物の事を考えると、今日は帰った方が良さそうに思えた。

「どこかに寄っていく?」

と一応彼女に聞いてみた。

彼女は無言のまま首を横に振った。

東西線の浦安駅から電車に乗り、地下鉄を乗り換えて半蔵門線に乗る。

これに乗ってしまえば後は一直線だ。

地下鉄の車内は騒音もあり話せなかった。

そのまま浅い眠りに落ちる。

騒音が無くなったと思えばもう、二子玉川駅に着く所だった。

彼女も気が付きゆっくりと席を立った。

「じゃあね!」

と言うと心無しか元気無くコクッと頷いた。

疲れているんだと思った。

電車を降りた彼女はそのまま振り向きもせずに歩いて行った。

そんな彼女の姿を見るのは初めてだった。

そして、これが別れのサインであった事には気付かなかった。

これが僕が見た彼女の最後の姿になった。

第127話「オサラバ坂同窓会と松島トモ子」へ第129話「ピンクレディ復活コンサート」

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■ 彼女との出会い ■

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