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第118話「田原俊彦・新宿厚生年金会館コンサート」

第118話「田原俊彦・新宿厚生年金会館コンサート」

あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと 

「俊ちゃん」の「新宿厚生年金会館コンサート」の朝を迎えた。

新宿通りをまっすぐ、新宿三丁目に向かって歩くと左側に見えてくるのが、新宿厚生年金会館である。

楽屋の入り口には、まばらにファンの女の子が待っていた。

軽く会釈して楽屋口に入った。

昨年のTBSテレビドラマ「オサラバ坂に陽が昇る」に出演していた時までは「追っかけ」と呼ばれるファンが僕にもいた。

しかし今はいない。

去年の春に高校を卒業して働いているのだろう。

「もう、今までみたいに追っかけが出来ない」

と言われた事を思い出した。

楽屋に入ると既に何人かのジュニア達がいた。

挨拶をして鏡の前に座ると、大量の「パテ」が用意されていた。

「パテ」とは顔に張り付ける粘土で、張り付けて暫くすると乾燥して、上から化粧が出来るのだ。

今回のコンサートの出番は「Thriller(スリラー)」1曲だけである。

出来るだけリアルにメイクして「お客様」を驚かせるのも役割なのである。

稽古着に着替えて、ストレッチをする。

続々とジュニアの面々が到着しリハーサルの時間になった。

ステージに集合して、ボビーさんの指示のもと、場当たりが始まる。

それぞれ出る場所が違うので、その位置確認もしている。

何人かのジュニアは客席から出る。

お客さんを驚かせてからステージに這い上がると言う演出である。

僕はステージの下手(しもて)から出てくる。

全員が出た所で、カウントに合わせて3列に並びゾンビダンスを始めるのだ。

ボビーさんのカウントに合わせて振り付けを踊る。

一通り位置の確認、振りの確認、動線の確認が終わった所で、先輩、田原俊彦、「俊ちゃん」が現れた。

「おはようございます! 」

とジュニア達が挨拶をする。

スウェットスーツを着た俊ちゃんにボビーさんが説明を始める。

ゾンビに囲まれ持ち上げられて、頭から落ちるようにバック転をするシーンである。

説明を受けた後にまずやってみる事になった。

後ろ向きに俊ちゃんが持ち上げられる。

段取りの通りに、僕は俊ちゃんの手首を掴んで床に付けようとした。

その時、まだ手がつく前に身体がひっくり返された。

危うく頭から落ちそうになるが高い身体能力で直ぐに着地をした。

「これ危ないよ! 」

と俊ちゃんが言う。

ボビーさんが少しきつめに、慌てないで、手が床に着いのを確認してから、下半身を持っている人が手を離すように注意された。

手を持っている僕は床に手を着いたら合図をおくる事になった。

2度目は問題なく成功した。

俊ちゃんを交えて、頭から音楽に合わせて踊る。

何ら問題なく、リハーサルを終えた。

楽屋に戻ると直ぐにメイクに取りかかった。

僕は目の上と下にパテを張り付けていびつになるようにした。

肌色と青を混ぜ、目の回りは黒くして、マイケルジャクソンのプロモーションビデオに登場しているダンサーのようにメイクアップをした。

他のジュニアの面々は赤を混ぜて傷口を作ってみたり、顔半分を赤、半分を青にしてみたりと、自由にメイクを楽しんでいた。

たっぷり1時間以上のメイクが完成すると、誰が誰だか解らない状態だった。

衣装も引き裂かれたボロボロの物を身に付けてスタンバイをする。

楽屋の中は若いゾンビだらけになった。

コンサートが始まった。

鈴木君を筆頭に、4人の「ジャPAニーズジュニア」のメンバーはバックで踊るのでメイクはしていない。

「Thriller」のナンバーではお面を被るだけだ。

それ以外の「ジャニーズジュニア」は皆スタンバイに入った。

何人かはホールのロビー方面へ向かい、上手と下手に別れてそれぞれ出番を待っている。

ステージの上では田原俊彦が華やかに歌い踊っている。

その後ろでは、ジャパニーズジュニアの面々が踊っていた。

正直羨ましかった。

ネガティブになりかける気持ちを振り払い、その時を待った。

華やかなナンバーが終わり、ステージの照明が暗くなる。

無音になった事と照明が暗くなった事で客席がざわめき始めた。

「Thriller」のイントロが流れ始める。

ステージ上には徘徊するゾンビ達が現れる。

曲のボルテージが上がると出入口付近にいたジュニアが扮するゾンビ達が一勢に雪崩れ込んだ。

客席から悲鳴が上がったので脅かす事には成功したようだ。

曲のテンポが変わり、衣装を変えた俊ちゃんが登場した。

ジュニアが3列になり踊り始める。

踊り慣れた、あのマイケルジャクソンのスリラーを俊ちゃんと同じステージで踊っているのだ。

客席ではペンライトが揺れ、大きな黄色い歓声がステージに投げかけられる。

幸せだ。

そして、何よりも楽しい!

踊りながら、鳥肌が立つほど感動していた。

振りを間違える事なく、俊ちゃんを持ち上げるシーンになった。

僕は、俊ちゃんの手首を掴み床に誘導して手が着いた所で「ハイ! 」と声を出した。

俊ちゃんの身体が弓なりに弧を描きながらステージ上に無事着地した。

再び、俊ちゃんがマイクを持つ。

サビの部分を歌い踊る。

その後ろで僕らも踊った。

そして、ステージ上でゾンビに扮するジャニーズジュニア達が散らばり始めた。

問題なく終わりそうだ。

後はポーズを決めて終わりだ。

楽しい充実した時間だった。

僕は両手を上げ、右足をキックしてその足を右後ろに引いた。

両手を耳の横から真下に大きく開いて振り下げた。

ステージの上に陸上選手のハードル跳びのような格好でダウンした。

その時だった。

右肩に激痛が走った。

「抜けた!! 」

そう思った。

右肩の関節から、右腕の感覚が無い。

左足を前に右足はL型に曲げて、上体は左足に胸も頭もくっついている。

「ぺちゃんこ」に潰れた状態で右肩の脱臼をしてしまった。

左には田原俊彦の足が見える。

客席は満席だ。

痛くて動けない。

汗が滴り落ちる。

「うぉお!」

と、左手に力を入れる。

無理やり上半身を起こす。

右腕をたぐり寄せる。

左手で右手首を握れた。

腹の前に置く。

再び、左手を床につき左足を折り曲げ立ち上がる体勢を作ってみる。

ズキンと一瞬、脳天を突くような痛みが走る。

「くそ!」

「とにかく舞台の袖まで早く捌けなければ次の曲が始まってしまう! 」

もう、責任感のみで、身体を動かした。

幸いだったのは演出上「ゆっくりゾンビらしく捌ける」設定で少し長めに曲間が取ってあった事だ。

左足の裏を床につき、右足も引き寄せ左手を尻の後ろに付けて踏ん張って立ち上がった。

同時に腹の前にあった右腕がダランと垂れ下がる。

ズキン! と再び痛みが走った。

腕を抱えたいがお客さんが見ている前で痛いそぶりは見せられない。

右腕を垂れ下げたままゆっくりと歩き始めた。

「ゾンビらしく歩けば良いのだ」

と言い聞かせ一歩、また一歩と袖まで歩いて行く。

レッスンの時に首の無いゾンビの真似をして歩いていた事を思い出した。

今はそんな余裕は無い。

袖口までの距離がやけに長く感じる。

肩が外れたまま右手がダラリと下がっているので左手も下げた状態で袖口まで歩く。

あと2メートル。

殆どのジャニーズジュニアのメンバーは捌けてしまっている。

残っいるのは、僕とあと1人だ。

あと1メートル。

一歩、そしてもう一歩踏み出した場所が袖口の中幕の後ろだった。

黒いジーンズにトレーナー姿のスタッフが「リアルだねぇ! 」と声をかけてきた。

「いえ、肩が外れたんです! 」

と答えた。

ステージの上は照明が明るくなり、次の曲が始まった。

同時に客席から見えない場所まで行くと、直ぐに右腕を持ち少しずつ上げて行った。

違和感と痛みが襲う。

が、歯をくいしばって更に左手に力を込めて右腕を肩と水平になるぐらいまで一気に上げた。

「ボコッ!! 」

と骨が収まる音が肩から聞こえてきた。

まるで強力な磁石に引き寄せられるように肩と腕が繋がった。

同時に今度は肩の内側から「針でつつかれるような痛み」が襲ってきた。

様子を見ていたスタッフが「大丈夫か? 」と声をかけてくれた。

痛みを押し殺し「もう大丈夫です! ご迷惑おかけしました!! 」

と言って楽屋を目指した。

「肩の痛み」よりも「本番のステージの上で脱臼してしまった事」の方が心の痛みとして残った。

幸いコンサートの進行に差し支えなく事なきを得た。

が、一歩間違えればコンサートそのものを駄目にしてしまうだけに胸中は複雑だった。

楽屋に戻るといつもの「ワイワイ」とした雰囲気にほっとした。

誰も気がつかないようだ。

このまま黙っておこう。

ジュニアの1人が腹を立てたように楽屋に帰ってきた。

「ファンの子にひっぱたかれた! 」

「えー! マジで!? 」

「ホールの出入口から出て、1番近い子を驚かせてやろうと近付いたら、きゃー! 来ないで!! って言ってバチン! だぜ!! 」

皆が大笑いをする。

「おまけに叩かれた拍子に顔に貼っつけたパテが飛んで行っちゃってさぁ、作るのに1時間かかってるじゃん! やる気無くしちゃったよ!! 」

と言っていると、ジャニーさんが入ってきた。

「ユーたち、この下の階に浴場があるから、使って良いから! 」

と言って席に腰を下ろし、出入口付近にいる「ジュニア」と談笑を始めた。

僕は顔に貼り付けたパテを左手で剥がしクレンジングクリームを顔に塗り、ティッシュで拭き取った。

右腕は上がらない。

左手だけでは上手く落とせない。

「駄目だ! 落ちないから風呂場で落とそう!! 」

と言って1人のジュニアが立ち上がった。

「俺も行こう! 」

と言って僕も立ち上がった。

タオルを1枚持って浴室に向かう。

浴室に入ると脱衣室があり、その扉の奥には5人位が入れる湯槽があった。

まるで旅館のようだ。

脱衣所で僕は裸になり、姿見鏡に写った自分の上半身を見た。

左肩は丸く筋肉がついている。

しかし、右肩には、あるはずの筋肉が無くなっていた。

第117話「田原俊彦とM・Jスリラー」第119話「NHK初!4分間のダンス少年隊・アフリカ―ン」

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ABOUT ME
たけx1
別名:@moonwalker_take。元、ジャニーズ50代、2児の父親離婚バツイチ現在独身。10代の頃はジャニーズに所属、退所後はミュージカルダンサー、お笑いタレント、ショーダンサーなどをし生きてきました。40代半ばで離婚。失業、夢のような人生も夢にも見ない人生も両方を垣間見ました。50を過ぎて、未来の自分のために、今までお世話になった方々のために、ブログを通じて夢見る人生を生きていく事を発信していきたいと思います。