Johnny's

第21話「夢の世界の入り口~ユーは何をやりたいの?~」

たけJI

[box03 title=”第21話「夢の世界の入り口~ユーは何をやりたいの?~」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]


僕はヨッちゃんバンドのオーディションで全力で『なごり雪』を熱唱した。

場違い、お門違いを承知の上で全力で歌いきった。

そして少し余韻に浸っていた。

するとマイクを通して声が響き余韻を遮った。

「ユーは、何をやりたいの? 」

少し優しいが、不審そうに聞かれた。

声の主は勿論ジャニーさんだ。

咄嗟に言葉が出てきた。

「僕は歌って、踊れて、何でもできるアイドルになりたいです!」

少し間を置いて再び聞かれた。

「特技はギターって書いてあるけど? ギターは弾けるの? 」

別の審査員だ。

「はい! ギターは弾けますが、皆さん程上手くは弾けません!」

しばらくの間沈黙が支配した。

すると信じられない言葉をかけられた。

「ユーはジャニーズジュニアになりなさい!」

「!? 」

「オーディションが終わるまで帰らないでロビーで待ってて!」

「は、はい。有り難うございました!」

ステージの中央から袖に引き返しながら今の会話を反芻する。

「ジャニーズジュニアになりなさい? 」

確かにそう言った。

「そんなに簡単にジャニーズジュニアになれるのだろうか?」

合否の通達は「後日連絡」だったのでオーディションが終わった者は皆、速やかに帰っていった。

人の気配があまり無くなったロビーのソファーに腰をおろす。

オーディションが終わるまでの間、一人ポツンと待った。

5分・・10分‥20分‥30分・・

何をする訳ではない時間はやたら長く感じた。

腕時計の秒針と長針が回っていくのを黙って眺めていた。

すると、オーディションが終わったのか、スタッフの声が聞こえた。

ロビーのドアが開き、ジャニーさんと野村義男ことヨッちゃんの姿が見えた。

直ぐに立ち上がる。

スタッフと挨拶して別れると、僕を見つけたのかこちらに向かって歩いてくる。

オーディションの時とは違う緊張感が全身を包んだ。

ジャニーさんとヨッちゃんが僕の1メートル手前で止まった。

「こんなに間近で芸能人を見れた!」と、心の中ではそんな事を考えていた。

「ユーはこの後時間大丈夫なの?」

と聞かれた。

「はい! 大丈夫です!」

と力強く答える。

時計を見ると時間はまだ7時前だった。

「ヨッちゃんは、帰るんでしょ?」

今度は隣のヨッちゃんに聞いた。

「はい!」

とテレビでよく見る人懐っこい笑顔で答えた。

「じゃ、また連絡するから! 今日はお疲れ様!」

と言うと「お先に失礼します!」とジャニーさんと僕に挨拶してヨッちゃんは帰って行った。

見送りながらジャニーさんが話し掛けて来た。

「じゃあ、今からレッスンしてるから見に行こう! 」

と言って歩き出した。

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