第120話「少年隊ファーストコンサート・前編」
[box03 title=”第120話「少年隊ファーストコンサート・前編」”]
あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
寒かった冬がようやく終わりを告げ春を迎えようとしていた。
何か新しい事が始まりそうな予感のする3月になった。
高校を卒業して丸1年になる。
昨年はテレビドラマの出演が決まってワクワクしながら迎えた春だった。
今年も「絶対に何かがある」と思っていた。
いやそう願い、そう信じていた。
「これで終わりにはしない!」
と頑なに信じていた。
そんな折、少年隊のファーストコンサートの話しが決まった。
まだ、レコードデビューもしていない少年隊だが、コンサートをする事になったのだ。
しかも、前代未聞の1日「5回公演」である。
場所は、東京芝郵便貯金会館と言う事だった。
これを取っ掛かりに、必ずまだ、「バックで踊る以外のチャンスはくる!」と信じていた。
日曜日以外にもレッスンのスケジュールが入る。
僕は問題ないが、他のジャニーズジュニア達は大丈夫なのか?と思ったが、よく考えてみれば、その頃にはもう春休みになる。
学生時代の感覚を忘れ始めていた。
テレビ朝日の第2リハーサル室でボビーさんの振り付けが始まった。
「オーバーチュア(序曲)」と呼ばれるオープニングの振り付けだ。
とは言っても、会場の入り口から客席を通り舞台に向かうだけである。
ボビーさんがジャニーズジュニアのメンバーをそれぞれ、上手から出るメンバー、下手から出るメンバーと順番を決めて行く。
幻想的な曲が流れる中、僕たちジャニーズジュニアはゆっくりとした歩調で客席を歩きステージに上がる前に曲が終わる。
ステージ上ではイーグルスやジャPAニーズジュニアがゆっくりとさ迷い歩いている。
その中に、黒いマントを纏った少年隊の3人が混じりあう。
スタンドマイクの前に立った頃にオーバーチュアが終わり2曲目になる。
2曲目は「ビートルズ」の名曲「HELP!」である。
その「HELP! 」をスローなバラードのように歌い始めるのだ。
そしてその間にジュニアたちはステージに上がる。
スローに歌っていたフレーズが終わると、続けて次の曲「あなたに今、good-bye」に変わる。
一瞬にしてマントを剥ぎ取るとカラフルな衣装を着ている少年隊に変わると言う段取りである。
ジュニアのメンバーが、少年隊が脱いだ衣装を片付けて走る中で、8エイトだけ踊ると一旦ジュニアは舞台から捌ける。
とオープニングから3曲目までは繋がった構成になっているので、実質的に振り付けをして踊るのは「あなたに今、good-bye」のほんの少しだけである。
その振り付けを踊ったら、一旦舞台から捌けて、今度は、衣装を着替えて次の曲から踊ると言う段取りであった。
会場に行って扉から出て客席を歩いてみなければわからないが、図面を元にどれだけ時間がかかるかを予測してボビーさんが説明をした。
冒頭の振り付けが済むと、今度は今までNHKの「レッツゴーヤング」で踊った曲の振り付けならぬ「振り直し」に入る。
少年隊の振りは変わらないが、後ろで踊るジャニーズジュニアはメンバーが入れ替わったり、踊る場所が変わったりする。
「アフリカーン」や「急げ! 若者」、そして「踊り子」「あいつとララバイ」などの振りを直して踊り続けた。
1度覚えて踊った曲なので、思い出すのにそれほど苦はなかった。
むしろ、コンサート用に新しく振り付けた「ジャクソンズ・メドレー」や「ローリングストーンズ・メドレー」などの段取り、タイミング、立ち位置などを覚えて消化して行く方が大変だった。
1度振り付けが終わると、直ぐに新しい曲の振り付けに入る。
自分でメモをしながら、覚えていかないと、頭だけでは覚えきれない量になってきていた。
ある曲は舞台の左側(下手)から出て来て踊り、右側(上手)に捌ける。
ある曲では客席から出て左側(下手)に捌ける。
振り付けをしていく曲の順番はバラバラなので1曲、1曲、振り付けを覚えると同時に出る場所、捌ける場所をノートに書く。
それをジグソーパズルのように組み立てると、自分のコンサートでの流れが見えてくる。
1曲踊り、次の曲に出る時に衣装を着替えて出るのを「早変え」と言う。
「1分」あれば着替えは出来るが、舞台を捌けて、着替えて舞台に戻り、踊り出す迄が「1分」である場合はかなり厳しい。
その場合はボビーさんに申告をする。
人によって出る曲数やタイミングが違うので、しっかりと申告しないと本番で大変な事になる。
こうして徐々に「少年隊ファーストコンサート」の振り付けが進んでいった。
少年隊のファーストコンサートでは、「ヒガシ」「ニッキ」「かっちゃん」にソロナンバーがある。
「ヒガシ」は『恋は素早く』
「ニッキ」は『 天使たちの場所』
「かっちゃん」は『ある日曜日の物語』
とそれぞれあるのだが、それ以外にも今回は「空を飛べるか」と「母捨記(ははすてき)」と言うナンバーがあった。
これはBGM(インストゥルメンタル)に合わせて詩を朗読する芝居のようなものである。
このナンバーの演出は「劇団天井桟敷」にいた「萩原朔美」さんが担当した。
なんとあの「萩原朔太郎」さんのお孫さんである。
その方がアングラ演劇の巨匠「寺山修二」の作品を演出するのである。
ジャニーさんと、どう言う繋がりかは知らないが、今回は華やかなコンサートの中に異色な作風が入る事になった。
その中でも特に「母捨記(ははすてき)」は異色だった。
これは、ヒガシが担当して、僕や木暮君、を始めジャニーズジュニアの何人かが出演する事になった。
おおよそヒガシのイメージとはそぐわないような、母に対しての告白を朗読していく。
それに合わせて、「母さーん! 」とジュニアたちが絶叫する。
アイドルのコンサートから「アングラ劇団」のような空間に一瞬にして変わる。
朗読する内容も過激だ。
「母捨記」
「かあさん 僕は想い出している
かあさんの熱く大きな腿の上で頭を洗ってもらった時
泡だった石鹸が目にしみて
かあさんを初めて呪ったことや
かあさんの真黒な陰毛が湯気にしっとりしていたことを
かあさん 僕は想い出している
国立病院の木造病棟の隅っこで
ざあっと桜が散った時
ネフロオゼのかあさんの温かい小便を
長い廊下の果てにある
昏い便所へ置きにいったことを
一緒に並んだ他人の小便(もの)は
諦めきって冷えていたが
かあさんの小便は淋しい色をして
とてもうらめしそうだった
その透明すぎる溲瓶がみるみる灼くなるのを
僕は黙って見つめていた
その時便所の小さな格子窓に
ざあっと桜がまた散った
かあさん 僕は涙ぐんでしまう
かあさんはシャルル・ペローの童話のように優しく
僕の起源を教えてくれたまま
キャベツを剥きアイロンをかけつづけてきた
ああ、罪深き太っちょのかあさん
僕と朝鮮娘李薫花のおとなっぽい愛情も
遠い静かな場所で射精する音も
気だるい愉しい罷業を覚えたことも
ああ かあさんなんにも知らないかあさん
なんにも触れないかあさん
なんにも予期できないかあさん
かあさんのとびきり灼い血が
僕の指を目を亀頭を心臓を疾走してゆく時
僕はたちくらやみの中で
何もかも見抜いてしまう
ああ いたいけな太っちょのかあさん
結核菌だらけの淋しいかあさん
どんな単語にだってたじろがないかあさん
物欲しそうな白い軟らかい腕のかあさん
かあさん 僕は断ち切る
ねっとりどろりとした二重瞼の中の打算を
僕にいずれ取りのぞいてもらおうという下腹の中の脂ぎった<忍耐>を
かあさん 僕は捨てる
かあさんの性急な願望の巨大な臀を
かあさんの欲深な身のほど知らずの乳房を
かあさんの本音を曳きすぎる言葉を
かあさん 僕は消滅させる
かあさんの昼寝姿の思想と陰謀を
かあさんの膨れあがった憎悪の目と暴力を
かあさんの思いあまった声と幸福の死水を
かあさん 僕は帰れない
かあさん以外の陸を
僕は前々から予測していた
さっきも名もしらない海で
そっとひとり乗り込んだ船は
刻一刻かあさんを見限って
太い誇りをボオッ!と鳴らす
かあさん 僕は帰らない
かあさん 僕は帰らない
僕は青白い孤独な密航者なのだし
僕の背中遙かに翻る洗濯物の上で
涙ぐむかあさんのためには
一本の曳航綱さえ用意されていないのだから」
※台本「時代はサーカスの象に乗って 84」より抜粋。
ヒガシが絶叫しながら熱く詩を朗読していく。
それに合わせてジャニーズジュニアが「母さん僕は帰らない! 」とフレーズのついた詩を歌う。
稽古中でも、不思議な空間になっていた。
稽古中に、萩原朔美さんと、ジャニーさんがジュニアを見たり、指さしたりしながら話しをしていた。
おもむろに、鈴木則之君、柳沢超君、木暮毅君と、僕の4人がジャニーさんに呼ばれた。
「ユーたち、今度天井桟敷のミュージカルに出るから! 」
「ミュージカル? 」
と4人の口から溢れた。
するとジャニーさんが捕捉するように言った。
「5月に渋谷のPARCO par3で、ロックミュージカルを演るんだって! 」
すると萩原さんが「時代はサーカスの象に乗ってと言う作品があって、今回はその再演をミュージカル風に上演する」と言う趣旨を説明した。
次の仕事が決まった。
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少年隊ファーストコンサート・台本。
開演時間が1日5回と言う、世にも珍しい台本である(笑)
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