Johnny's

第127話「オサラバ坂同窓会と松島トモ子」

たけJI

[box03 title=”第127話「オサラバ坂同窓会と松島トモ子」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]

「オサラバ坂に陽が昇る」で共演した「マスオ」事、生尾茂君から電話がかかってきた。

「洋次さん! 久しぶりにみんなで集まりましょうよ!」

と相変わらず元気な関西弁で捲し立てた。

彼の声に元気が出る。

俊ちゃんのコンサートの振付を覚えられず、ツアーに参加する事が出来なくて落ち込んでいたが、励まされるような声に癒される。

「久しぶりにイルカさんに会いに、コンサートに行きましょうよ!」

と元気良く切り出した。

すでに何人かの出演者に声をかけていて、その中には矢崎滋さんも入っていると言った。

コンサートとの日程を告げられ、メモを取った。

残念ながら三好圭一君は仕事の為に日程が合わなかった。

が「ユタカ」役の斉藤康彦君や「ススム」役の諸岡義則さんと会えるので、楽しみが一つ出来た。

丸1年ぶりに会える彼らの変化が楽しみだった。

その日会場に行くと髪の毛が生えた「マスオ」がいた。

「おー! 洋次さん! お久しぶりです! 」

と関西弁で喋る。

関西のイントネーションは会話をしていて、楽しくなってくる。

そこへ斉藤康彦君と諸岡義則さんが表れた。

ロケの時には坊主頭だったので、髪の毛が生えている二人に少し違和感を感じた。

向こうもそう思ったらしく、顔を見るとニヤニヤしている。

イルカさんの楽屋へ挨拶に向かう。

コンサート前だと言うのに、イルカさんは丁寧に話をしてくれた。

「いやー!髪の毛が生えるとみんな大人になったみたいね! 別人みたい! 」

と言って笑った。

そこへ矢崎滋さんも合流して、懐かしさと共に、一気に盛り上がった。

コンサートでは、歌と歌のトークコーナーで「1年前になるのかな? オサラバ坂に陽が昇ると言うテレビドラマに出演させて頂きまして、その時の私の夫役だった矢崎滋さんと、生徒役だった皆さんが今日は会場に来てくれています!」と紹介してくれた。

生のコンサートで聞くイルカさんの歌声はとても優しく、乾いた心を癒してくれる。

「こんなに凄い人と一緒にテレビドラマに出演したんだ!」と改めて思った。

「なごり雪」を歌い始める。

中学生の頃にギターを弾き始め、最初に覚えた曲であり、ヨッちゃんバンドのオーディションで歌った曲である。

この曲が無かったら僕はジャニーズに入る事も無かったであろう。

イルカさんの圧倒的な声量で歌いあげる「なごり雪」を聴いていたら、なぜか一粒の熱いものが頬を伝った。

コンサートが終わり再び楽屋に集まる。

そこで今度は矢崎滋さんの家で同窓会をする事になった。

後日、京王線の沿線にある駅で集まり矢崎さんの住まいへ向かった。

コンサートで集まったメンバーが再集合。

イルカさんのご子息も参加して、家族のようだ。

一つの部屋に皆が集まるとまるでドラマの中で過ごした「若葉寮」に戻った感じがする。

その住まいの屋上に登り夕陽を眺める。

夕陽の中でイルカさんのご子息と戯れて、ゆっくりとした時間を過ごす。

今過ごしているこの時も何れは過去になる。

もう少し芸能界の片隅でまだもがき続けていたい。

そう思った。

気持ちが少し前向きになった。

翌日、その日も唐突に、ジャニーさんから電話がかかってきた。

「ユーは松島トモ子って知ってる?」

「はい! ミネラル麦茶のCMに出ている人ですよね!?」

「そうそう! ユーは8月3日4日5日に舞台に出れる?」

「はい! 大丈夫ですけど!」

と言うと、改めて松島トモ子さんの舞台があり、ダンサー界の大御所である「中野ブラザース」さんと一緒に新宿紀伊国屋ホールで行われる舞台に出演するように言われた。

そしてジャニーズジュニアからは僕以外に、鈴木則行君、前田直樹君、小暮毅君、田中寛規君、塩入訓君、の6人が出演すると言われた。

ジャニーさんの電話はいつも唐突だった。

具体的なスケジュールの確認をしてから内容を教えてくれる事が多い。

この時は共演する事になる、中野ブラザースさんが振り付けをするかも知れないので、失礼のないようにと言われた。

中野ブラザースは実の兄弟のダンスユニットで、ラスベガスでも活躍した日本のタップダンス界の第一人者である。

僕は年配の方には敬語で話し、言葉使いには気をつけており、ジャニーさんもそれは知っていると思う。

当たり前の事だが、ちょっとした態度や言葉使いで印象が悪くなってしまう事もある。

ジュニアの中には、タメ口のように話してしまう子がいた。

本人はそんな気持ちは無いのだろうが「本当ですか?」を「マジっすか?」と言ったら「話し方がなってない!」と言われた時代である。

大御所である大先輩に失礼の無いようにと念を押された。

それは僕に言っていると言うよりは、「そう言う事が無いように見ていてくれ!」と言っているようだった。

ジャニーさんとの会話は、入った当初こそ「ユーも遊びにおいでよ!」と言われたが、例の一件以来仕事の話のみである。

僕はジャニーさんのお気に入りではない。

あくまでも僕が思っている事だが、ジャニーさんが好きなのは年齢が15歳位まで。

19歳の僕はさしずめ賞味期限切れと言った所だ。

タイプはちょっと陰があるか、少し突っ張っているような、背伸びしているような男の子で、色白な細い子が好きなのではないかと思う。

色白で細くて無毛。

華奢な身体なのに、無理してちょっと悪ぶっている、そんな男の子がタイプだと言うのは外れてはいないだろう。

ジャニーさん本人が「片親の男の子は俊(俊ちゃん)もそうだけど、根性がある! 自分が頑張らないと、親に恩返しが出来ないと思っているからネ! だからそう言う子を見ると応援してあげようと思っちゃう!」と言っていた。

「ユー、片親の子がいたら紹介して!」と言われた事もあった。

色んな応援の仕方があるのだろうが、ジャニーさん流の場合はとても解りやすかった。

今回、僕が出演する事になったのは松島トモ子さん主演の舞台で「This is トモ子」と言う作品だ。

稽古は目黒区にある、松島トモ子さんの自宅の稽古場で行われた。

自宅に伺うのにバラバラで行ったのでは失礼になるので、ジュニア6人で待ち合わせて向かった。

ご自宅の稽古場はそれは立派な作りで、鏡張りでバレエのバーもついている本格的なダンススタジオだった。

緊張してスタジオに入ると、笑顔でトモ子さんが迎えてくれた。

そこへ中野ブラザースのお二人も表れる。

白髪混じりのダンディーな雰囲気で、怖い感じはしなかった。

挨拶をすると優しく接してくれる。

松島さんとは旧知の中と言う感じだった。

僕はこの時始めてタップダンスを見た。

ある意味衝撃的だった。

1人1人の個人技もさる事ながら、二人が一緒に踊ってシンクロした動きは圧巻である。

音が鳴るだけに間違えればたちまち解る。

二人の息がピッタリと合い、見事なコンビネーションの凄さと、コミカルなネタを織り交ぜ素敵なエンターテイメントが既に出来上がっていた。

僕たちはさすがにタップダンスは踊らない。

いや踊れない。

さすがに数週間で出来るようなものではない。

今回の作品は二部構成になっており、第1部はエンターテイメントショー、第2部は、戦争にまつわる芝居だった。

僕たちは、第1部のエンターテイメントショーがメインで松島さんをエスコートしながら踊るのだ。

松島トモ子さんは歌、ダンス、芝居とこなすエンターテイナーで、中野ブラザースとの共演で踊ったタップダンスは圧巻だった。

それまでの僕はどちらかと言えば、激しいダンスやマイケルジャクソンが踊るようなポップで、ファンキーなダンスやブレイクダンスに興味が傾倒していたが、ジャPAニーズジュニアに落ちた件もあり、本格的なタップダンス、ジャズダンス、そしてショータイムでエレガントに踊るシアターダンスに興味を持ちはじめた。

そんな思いを胸に、稽古はアットホームな雰囲気の中行われ、何の問題も無く月日は流れた。

そして僕は、新宿紀伊国屋ホールの舞台に立った。

第126話「少年隊と俊ちゃんとコンサートツアーの挫折」
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■ この物語の始まり ■

第1話 「始まりはフォーリーブス」

■ 彼女との出会い ■

第12話「マッチと彼女とアルバイト」後編

■ ジャニーズに入った時の話 ■

第18話「初めてのオーディション」(後編)

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