第129話「ピンクレディ復活コンサート」
[box03 title=”第129話「ピンクレディ復活コンサート」”]あの頃のジャニーズ 夢と彼女とジャニーズと [/box03]
翌日、ジャニーさんから電話がかかってきた。
「ユー、9月の2日の日曜日にピンクレディの復活コンサートがあるから! ユーは出れる?」
と言われた。
松島トモ子さんの仕事からちょうど1ヶ月ぶりだ。
渋谷公会堂で行われるピンクレディの復活コンサートにはジャニーズジュニアがバックダンサーとして出演する事が決まったらしく、テレビの録画放送も決定したらしい。
当然今週中に振り付けをしなければ間に合わないので、リハーサルの日に来れるかどうかを聞いてきた。
「僕は大丈夫です!」
と答えた。
振り付けは西条先生が行うようだ。
レッスンの日時、場所を聞いてメモをする。
夏も終わろうとしているが辛うじて仕事が入った。
少し胸を撫で下ろした。
受話器を置いて時間を見る。
彼女に電話をしようかと思ったが、まだ帰っていない時間だ。
昨日逢ったばかりなのでかけるのをやめた。
翌日、ピンクレディ復活コンサートのリハーサルが和やかな雰囲気の中で行われた。
リハーサルはジャニーズジュニアだけだった。
ピンクレディのヒット曲メドレーをバックで踊るのだ。
「ペッパー警部」
「S・O・S」
「カルメン’77」
「渚のシンドバット」
「ウォンテッド」
「UFO」
「サウスポー」
「モンスター」
「透明人間」
までを順番は違うが、メドレーになっている。
時にはピンクレディの振り付けをまるまる踊り、曲によってはアレンジしてまるっきり違う演出をして振り付けが進んで行った。
子供の頃に覚えた振り付けを、本人たちの後ろで踊れるのが嬉しかった。
バックダンサーと言う言葉は嫌いではない。
スターを盛り上げ、1つのステージやパフォーマンスを一緒に作り上げる役割を担っているからだ。
今回程バックダンサーが楽しいと思った事は無い。
間違えたり、忘れたりしないように家に帰っても練習をした。
窓ガラスに映る自分を見ながら1つ1つの振り付けを確かめていた。
振り付けのレッスンが終わると後は当日のリハーサルを渋谷公会堂で行い本番を迎える。
久しぶりにMIEさんに合えるのも楽しみだった。
ジャニーズジュニアも、選抜メンバーで20数人のメンバーである。
気心知れたメンバーばかりだったので尚更楽しかった。
9月2日の本番当日を迎えた。
朝早くから楽屋入りして舞台上で振り合わせをしていると、舞台の袖からMIEさんが姿をあらわした。
「おはようございます!」
と挨拶をする。
その後ろにKEIさんの姿が見えた。
KEIさんにも挨拶をする。
「おはようございます!」
すると優しく
「おはようございます!」
と挨拶を返してくれた。
すると突然、MIEさんが
「KEIちゃん、彼、たけちゃんって言うの、KEIちゃんのファンだったんだって~!」
と唐突に紹介してくれた。
食事会に行った時の事を覚えていてくれたのだ。
自分が赤面していくのが解る。
「何もこのタイミングで」
と思った半面、本当は嬉しかった。
しかもKEIさんは「わぁ、嬉しい! よろしくね!」と言って握手をしてくれた。
大スターである二人のそんな心遣いがとても嬉しかった。
ピンクレディの二人が揃うと慌ただしく、直ぐに振り付けの確認と場あたり練習が始まる。
今回はピンクレディのメドレーだけの出演で白いジーンズにピンクレディの名が入った白いTシャツが衣装である。
「渚のシンドバット」からセリ上がりで登場したジャニーズジュニアは、メドレーを踊り続ける。
「透明人間」ではマントを利用して消えていくような振り付けをし「モンスター」ではマスクを被ってマイケルジャクソンの「スリラー」のような振り付けを踊った。
「ウォンテッド」がメドレーの最後である。
一通りの練習を終えると、ジャニーズジュニアは休憩に入った。
渋谷公会堂の地下にある食堂に降りて昼食をとる。
何人かのジュニアは某国営放送局の食堂の方が安いと言って、そっちへ行ったらしい。
この頃のジュニアは自由奔放だった。
本番はテレビの録画放送もあり物々しい雰囲気が漂い始めていった。
客席にはピンクレディ復活を待ち望んだ、熱狂的なファンで埋め尽くされていく。
子供の頃にテレビで見ていた大スターが目の前にいる。
その大スターに名前を覚えてもらい、その後ろで、ジャニーズジュニアと言う名のアイドル予備軍の中に混ざり、舞台の上で踊り、テレビで放送される。
夢だった事が現実になった瞬間である。
気心が知れたジャニーズジュニアのメンバー達は仲間であり、ライバルでもある。
「ジャニーズジュニアと総称で呼ばれる中から自分の名前が呼ばれるように頑張ろう!」
とこの時はそう思った。
ジャニーズジュニア。
僕は、ジャニーズジュニアの一員として、悔いなく時を過ごした。
神様は「1番最後に」楽しい時間を与えて下さった。
まさかこの仕事がジャニーズで最後の仕事になるとは思いもしなかった。
ピンクレディー復活コンサート台本。
→『ピンクレディ復活コンサート』
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